TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』レビュー ~異論は認めない大名盤~
TESTAMENTが2016年10月28日世界同時リリースした通算11作目のアルバム『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』のレビューをしていきたい。
当ブログでは度々名前の挙がるアルバムだが、しっかりレビューはしていなかったということで満を持してやらせていただきます。
- TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』収録曲
- TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』総評
- TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』のサウンド
- 『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』楽曲解説
- TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』レビュー まとめ
TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』収録曲
- Brotherhood of the Snake
- The Pale King
- Stronghold
- Seven Seals
- Born in a Rut
- Centuries of Suffering
- Black Jack
- Neptune's Spear
- Canna-Business
- The Number Game
- Apocalyptic City (re-recorded version)
- Brotherhood of the Snake (alternative mix)
※11/12は日本盤限定ボーナス・トラック
☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3/4/6/7/9/10/11
TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』総評
徹頭徹尾ピュアなスラッシュメタルを貫いた大名盤。
唯一無二の個性的なリフ、重量感抜群のリズム隊、耳に残るメロディ、チャック・ビリー独特の野獣の如きボーカル、すべてが高い次元でひとつの作品としてパッケージングされている。
スラッシュメタラーなら耳が幸せになることうけあいの、スラッシュの"理想形"というか、もはや"完成形"と言ってもいい。
ホントにため息が出るほどカッコよく、ツボにはまりすぎた筆者は何周聴いたのかすでに覚えていない。
個人的に現時点(2021年2月)で最高のメタルアルバム。
この作品に対抗できるのは「SYLOSIS」のアルバムくらいかなと思う。
多くのメタルアルバムは、リフは良くてもメロが全く印象に残らなかったり、楽曲自体は練られていてもサウンドプロダクションが劣悪だったりして、すべての要素で満足できるものは意外と少ない。
あとよくある例として、キラーチューン以外が凡曲ばかりで全く話にならない作品など。
BROTHERHOOD OF THE SNAKEは、上述した不満な要素が入り込む余地などない"パワー"と"疾走感"に満ちたアルバムだ。
TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』のサウンド
ベイエリアスラッシュメタルの重鎮らしく、ザクザク刻むギターリフがアルバム全編で冴えわたっている。金太郎飴の如くどこから聴いても切れ味鋭いリフの嵐。
TESTAMENTはアルバムによってはグルーヴィーなリフを多用することもあるけれど、本作はうねる感じは少なめで、シャープに刻んでいるといった印象が強い。
5曲目「Born in a Rut」のような、比較的うねりが感じられるミドルナンバーでもお構いなしに刻みまくる。メンバーが意識していたのか定かではないが徹底しているのが分かる。
楽曲構成がよく練られており、次にどんな音が飛び出すのか予想できないドキドキ感が味わえる。それでも奇をてらった印象を受けないのは、ベテランゆえのバランス感覚だろか。
TESTAMENTならではの個性的なリフは本作でももちろん健在。
クセがありながらもキャッチーという絶妙にフックの効いたフレーズを畳み掛けてくる。
ギターソロも印象に残るものが多く、初期の作品で聴けた若干ダサいフレーズもメタラーの心をくすぐるだろう。
ヘヴィな楽曲を支えるリズム隊も聴き逃せない。特にドラムの手数の多さは圧巻で「どうやって叩いてんだこれ(笑)」と思わず笑ってしまったドラミングは必聴。
全体を通し所謂「スルメ」的な楽曲はほとんどなく、聴いた瞬間から琴線に触れてくる曲が多い点も高評価に繋がっている。
『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』楽曲解説
1.Brotherhood of the Snake
イントロが極めて印象的なタイトルトラック。
開幕を飾るにふさわしい完成度を誇る名曲で、長いキャリアに裏打ちされた王者の風格が音の一つひとつから漂ってくる。
イントロのリフがサビのバッキングにもなっており、元々キャッチーなリフが尚更印象に残るだろう。 緩急を付けた楽曲構成も圧巻で、いきなりハートを鷲掴みされるはず。
2.The Pale King
タメを効かせたキレのあるリフでガンガン進んでいく力強いミドルナンバー。
様々な要素のメタルを取り込み、突然疾走したりと先の読めない楽曲構成が非常にスリリング。
中盤でメインリフに絡みつく単音フレーズが個人的に好きなポイント。
3.Stronghold
「THE スラッシュメタル」といった様相の疾走感溢れるスピードナンバー。
頭をからっぽにして楽しもう。
4.Seven Seals
ヘヴィでスピード感のあるイントロから一転、ザクザク刻みながらも地を這うグルーヴィーなサウンドが展開される。
イントロ以外は基本的にどっしり構えた重さを感じるサウンドだが、唐突にテンポを速めた疾走パートが挿入されるおかげで曲にメリハリがついている。
5.Born in a Rut
4曲目のミドルパート同様に終始グルーヴィーな雰囲気が漂う。
収録曲の中では、上述したように刻みまくるリフのおかげで冗長性は低い。むしろその重量感はアルバムの中で際立っている。
1:55辺りのバスドラの連打は必聴。これが良いスパイスになっている。このプレイは後半でも聴きたかった。
6.Centuries of Suffering
スラッシュ好きなら「これだよこれ!」と思わず唸ってしまうことうけ合いの、分かりやすいスラッシュメタルナンバー。
イントロでも鳴っているメインの単音リフが印象的で、0:08辺りからのリフに合わせたリズムでドラミングする箇所は鳥肌必至。
7.Black Jack
こちらもイントロの単音リフが特徴的だが、6曲目のリフを正統派とするなら「Black Jack」のリフは若干変態的。
この曲のカッコよさはドラムによるところが大きい。疾走パートでの凄まじい突進力やリズミカルに跳ねる手数の多いドラミングはぜひ注目して聴いてもらいたい。
8.Neptune's Spear
「ベイエリアクランチの雄」面目躍如な、刻みまくりのミドルナンバー。アルバム自体が刻みの応酬なのだが、この曲は特に際立っているような気がする。
リフは比較的オーソドックスなタイプ。目新しい部分は少ないもののドラムのシンプルさも相まってストレートに響いてくる。
哀愁漂う物語性が感じられるギターソロは必聴。
9.Canna-Business
クサい単音フレーズで幕を開け、音の塊を全力で投げつけるかのようなエネルギッシュなリフに、疾走感を増幅させるドラムが暴れまわるスピードナンバー。
とくかく音の一体感が凄まじく、極限のバンドアンサンブルが楽しめる。
10.The Number Game
アルバム中最も激しいハイスピードナンバー。
イントロの荘厳でドラマチックなリフは、否が応でもテンションが高まる。矢つぎ早に繰り出される、乱射したマシンガンを彷彿とさせるリフとドラミングの激しさにきっと度肝を抜かれるだろう。
中盤以降はテンポを抑えたヘヴィネスなリフが楽曲を支配。
長めのギターソロ(&単音リフ)を挿み、再びマシンガンリフに移行した瞬間が至福の時。
11.Apocalyptic City (re-recorded version)
※日本盤限定ボーナス・トラック
1987年リリース「The Legacy」に収録されていた「Apocalyptic City」のリレコーディングバージョン。
原曲の完成度は言うまでもなく高いのだが、古い音源ゆえサウンド面で不満が残るというリスナーもいるかと思う。筆者が完全にそのタイプで、近年の音に慣れすぎてしまったせいか、古い音源は気分によって聴けなかったりする。
モダンな音にしたからといって最終的に良くなるとは限らないが、「Apocalyptic City」に関しては全く問題ない。それどころか完全に新しい楽曲に生まれ変わったと思えるほどだった。結果的には大満足な出来。
12.Brotherhood of the Snake (alternative mix)
※日本盤限定ボーナス・トラック
タイトルトラックの別ミックスバージョン。
音に高低差が生まれ、あらゆる方向から変幻自在にサウンドが迫りくる感覚に襲われる。立体的に聴こえるサウンドは面白いけれど、個人的にはオリジナルに軍配が上がる。
TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』レビュー まとめ
ということで、TESTAMENT『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』のレビューを思い入れたっぷりでお送りしてきた。
TESTAMENTは初期の作品を除いて、アルバム全曲が手放しで好きだと思えるものは少ない。
そんな中『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』は"大名盤"ということでここまで語ってきたが、さすがにすべての収録曲が”名曲”だとは思わない。
けれど、彼らのキャリアの中で本作に匹敵する作品が存在しないのも、個人的には揺るぎない事実。
スラッシュ好きなら満足できること間違いなし。
聴いたことのない方はぜひこの機会に手に入れてほしい。
それではまた。
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