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コロナ禍に鳴り響く人間賛歌「感染源」を含む、感覚ピエロ『毒の根の音』レビュー

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変幻自在のサウンド、卓越したポップセンスを武器に、邦ロック界で確固たる地位を築き上げた「感覚ピエロ」。

 

今回ご紹介するのは、彼らが2020年4月1日リリースした「毒の根の音」。

 

3曲入りシングルなのだが、方向性の異なる三者三様の魅力に溢れた満足度の高い作品だ。

 

特に3曲目の「感染源」が素晴らしいので、記事後半の楽曲レビューはぜひご覧いただきたい。

  

感覚ピエロ『毒の根の音』収録曲

  1. 共犯
  2. Sing along tonight
  3. 感染源

【作詞・作曲】

1 - 作詞・作曲:横山 直弘
2 - 作詞:秋月 琢登 / 作曲:横山 直弘
3 - 作詞・作曲:横山 直弘

 

 

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感覚ピエロ『毒の根の音』総評レビュー

 

ちょっとおバカで底抜けに明るい「コミカル」な楽曲も感覚ピエロの魅力。しかし、本作は分かりやすい「明るさ」を封印し、シリアスというかメッセージ性の高さが非常に際立っている。

 

現在の感覚ピエロは、自分たちの「型」を確立している感があるけど、本作でも独自の世界観を見事に表現していた。もはや「ジャンル:感覚ピエロ」と呼ぶにふさわしい、彼らにしか鳴らせないエモーショナルで珠玉の3曲が収められている。

 

実は2018年リリースの「色色人色」以降はまともにチェックしておらず、久しぶりに彼らの作品を聴いたのだが、正直言ってサウンドの成熟ぶりに驚かされた。

 

ロック然とした切れ味鋭いアプローチは感覚ピエロの武器であるが、それだけに留まらない懐の深さも本作で十二分に発揮されている。

 

方向性の異なる3曲が一つの作品に収まっているのだが、違和感を抱くどころかすんなりと聴かせてしまう手腕も特筆すべき点だと思う。

 

3曲ともに完全独立型の世界観を誇り、それぞれが特定の分野に振り切った作風だ。

 

『毒の根の音』は収録曲すべてにMVが制作されており、リードトラックの概念はないかもしれないけど、それを物語るように3曲それぞれに際立った良さがある。どの曲をメインに据えても様になるし、収録曲の内一曲はきっと琴線に触れると思う。

 

元々独自性の強いバンドだけど、少し聴かないうちに「何をやっても感覚ピエロ」という強烈なアイデンティティを形成していた。

 

彼らは自分たちが求められている音を理解した上で、常にアップデートを繰り返しているということだろう。

 

 

 

筆者が感覚ピエロを好きになったきっかけの一つに「横山直弘 (Vo/Gt)」の歌がある。

 

『毒の根の音』でも、張りのある歌声は相変わらず健在で、キレを感じさせながらも豊かな表現力にますます磨きがかかっていた。理屈抜きに爽快感が得られるボーカルは邦ロック界随一だと思う。 


 ではここから個々の楽曲について感想を語っていこう。

 

共犯 /『毒の根の音』

観終わったらもう一周観たくなること間違いなしの、アッと驚く仕掛けが施されたMV。

 

軽やかでリズミカルなピアノの音色、グルーヴィーなベースに身も心も弾むダンサブルでファンキーな一曲。

 

セクシーに艶っぽく歌い上げる横山のボーカルは圧巻。間奏後のラップパートも聴きどころの一つで、思わず体が動いてしまうほど躍動感に満ちている。バリエーション豊かな表現と、スキルフルな歌唱力を存分に堪能できるだろう。

 

"二番目"に甘んじていた恋する女性目線で紡がれた歌詞はインパクト抜群。

 

感覚ピエロに限ったことでないけど、ここまでクリアーに女性の心理とか内面を言語化できる男性アーティストは単純に尊敬してしまう。

 

私とよりももっともっと凄いことしてるの?

歌詞のこの一節は、楽曲の世界観を決定付ける極めて秀逸なフレーズ。

 

 

Sing along tonight /『毒の根の音』

感覚ピエロが得意とする王道のヘヴィ&ラウドなロックナンバー。

 

ロックの熱量がリミットを越えて注ぎ込まれた、初期衝動みなぎる激しいサウンドは否応なしに情感を煽る。すべてのパートがこれ以上ないという程スパークしており、せめぎ合う融合感にただただ圧倒されるだろう。

 

横山のシャウト気味な荒々しいボーカリゼイションも相まって、彼らの楽曲の中でも屈指の「疾走感」「アグレッシブさ」「爆発力」を誇り、その様は"激烈"の一言。 

 

アドレナリン出っ放しの作風なのだが、横山の「イェーーー!!」で狼煙を上げ、雪崩れ込むサビの解放感は得も言われぬエクスタシーが味わえ、ロックミュージックを聴く悦びを体感できるだろう。

 

つらつらと御託を並べたが、簡潔にまとめると

 

「最高にカッコいいから絶対聴け」

 

 

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感染源 /『毒の根の音』

闊歩する人々と、東京渋谷の街並みを淡々と映し出すMVは、楽曲が放つ真摯なメッセージをより鮮烈に描き出すとともに、シニカルさも内包している。

 

 

冒頭でも「感染源」ついて触れたけど、実は『毒の根の音』を紹介しようと思ったきっかけは、この曲に感銘を受けたからだ。

 

「感染」というキーワードでピンときた方もいるとは思うが、この曲はコロナ禍の世相を深く抉った楽曲である。

 

2021年現在、未だ収まらぬ新型コロナウィルスの驚異。心身ともに疲弊しているという方も少なくないだろう。

 

筆者も例に漏れず、挫けそうになりながら毎日を必死に生きている。

 

そんな時だからこそ、音楽が与えてくれる力を強く実感している今日この頃。

 

 

昨今の湿っぽいムードや、たちの悪い閉塞感をなぎ倒すパワーが「感染源」には宿っている。

 

コロナ禍で芽生えた負の感情を叫びつつ、人生/人間の真理を説き、最終的に壮大な「愛」を歌う。「人間賛歌」と捉えることも出来るスケールの大きな楽曲だ。

 

受け手の環境や心情によって「世相風刺」「応援歌」「ラブソング」など感じ方が変化する稀有な作風でもある。

 

いぜれにせよ、ここまでストレートな表現で感情をぶつける楽曲を久しぶりに聴いたのだが、年甲斐もなく思いっきり心に響いたし明日への活力が養えた。

 

照れ臭いほどまっすぐな熱い想いが込められた歌詞は、 今だからこそ多くの人に感銘を与えられるだろうし、筆者のように救われる人はたくさんいると思う。

 

 

楽曲としては、いわゆる「J-POP」的なセオリーを完全に逸脱したトリッキーな構成になっており、パートごとに目まぐるしくメロディが変化していく。

 

サビらしいサビは後半の「僕が感染源です~」からだと思うけど、そこへ至るまでの間も印象的なフレーズばかり。

 

個人的に、楽曲としての"面白さ"は最近聴いた曲の中で、頭一つどころか二つも三つも抜き出ている。

 

上記の要素すべてが凄まじい緊張感を孕みつつ「感染源」という"楽曲"を形成しており、どれか一つでもバランスを失えば、即座に破綻してしまいそうなスリリングな面も魅力の一つだと思う。

 

存在自体が奇跡だと思える「感染源」は、その緊張感も相まってやたらと胸に響く。とにかく悶絶するほどエモーショナルなのだ。

 

これほど心が揺さぶられるのは、心身の疲れが原因だろうか。いずれにせよ「感染源」はとんでもない名曲だと思う。

 

メッセージ性が極めて強く、センセーショナルな歌詞にどうしても関心が向くだろうが、楽曲自体の高すぎる完成度もぜひ意識して聴いてもらいたい。

 

 

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感覚ピエロ『毒の根の音』レビューまとめ 

「感覚ピエロ」が形成した自らのアイデンティティを、一点の曇りもなく表現した大満足の一枚だった。

 

たった3曲なんだけど、聴き応えとしてはそれを感じさせない仕上がり。個人的な嗜好でいうと、2曲目の「Sing along tonight」が最もアガるわけだが、本作に限っては「感染源」をじっくり聴いてもらいたい。

 

そろそろリリースされてもおかしくない2ndフルアルバムに否が応でも期待は高まる。先ほど公式サイトをのぞいたら、まだ聴いていない曲がいくつかあったのでこれからチェックしてきます。

 

それではまた。

 

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