ラウド好きは黙って聴くべし Sable Hills『FLOOD』レビュー
当ブログが激押しする邦楽メタルコアバンド「Sable Hills(セイブル・ヒルズ)」。
彼らが2020年06月12日リリースした3曲入りシングル『FLOOD』をレビューしていきたい。
■あわせてどうぞ
Sable Hills『FLOOD』収録曲
- Flood
- Divisions
- Our Tragedy
Sable Hills『FLOOD』総評レビュー
☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3
本作 『FLOOD』は、従来の作品と大きく変化した点がある。
キャッチーなメロディを伴った「クリーンボイス」が、より前面に押し出された作風であるということ。
Sable Hillsは、作品を追うごとに"歌"の部分へ少しづつメロディを導入してきたバンドである。
初期のボーカルは、いわゆる「歌モノ」で聴けるような「流麗なメロディライン」という物がほぼ存在せず「熱量のあるアグレッシブなシャウト」というスタイルで楽曲を盛り上げていた。
ただしサウンド面は、初期から一貫している。
ギターの単音フレーズ等「カラフル&メロディアス」なフレーズの応酬なので、下手したらポップに聴こえてしまうほど。
そんなSable Hillsの楽曲は、ボーカルとサウンドのバランスが絶妙。
上述した通り、ボーカルは作品を追うごとに徐々にメロディを歌うようになるのだが、サウンドとの調和は常に図られていた。
そして、前回レビューした1stアルバム『EMBERS』は、上記スタイルを極限まで研ぎ澄ました、近年稀に見る"名盤"になっていた。
その延長上にあるのが本作『FLOOD』だ。
「EMBERS」で提示して見せた「メロディを歌う」要素を、よりブラッシュアップさせている。
従来は、クリーンで歌う箇所へ、同じ旋律でスクリームを被せるというスタイルがほとんどだった。
楽曲全体で捉えると、キャッチーなギターサウンド同様、時に"主役"になるものの「アクセント」としての役割も大きいと感じていた。
ボーカルの聴かせどころは、あくまでもスクリーム/グロウルだと個人的には捉えていた。
ところが本作では、クリーンボイス単体で歌唱するパートが登場している(#2 #3)。
それによって、ダイレクトにメロディの良さが伝わるし「歌」自体の存在感もより強まったと思う。
とはいえ作品全体で捉えた場合、クリーンの比率はまだ少ない方だ。
次作がどういったスタイルになるかまだ分からないけど、少なくとも現状ではブルータリティとのバランスは取れている。
Sable Hillsの古参ファンは、本作の変化をどう捉えているか気になるが、よりメジャー感を増したと考えたら歓迎すべき変化ではないだろうか。
『EMBERS』のレビューでも少し触れたけど、ラウドロック好きに訴求するにはモダンなアプローチが必要不可欠。
近年「ラウドロック」で成功するバンドは、ハードなサウンドであってもクリーンで歌唱することが半ばお約束になっている。
特に日本人は"歌"で楽曲の善し悪しを判断する傾向があるため、避けては通れない部分かもしれない。
今や確固たる地位を確立した「Crossfaith(クロスフェイス)」も、大胆なクリーンパートの導入で賛否が分かれたこともある。
しかし、幅広い層へアピールできると考えれば、本作での変化は良い判断だったと思う。
より「ラウドロック」ファンに歩み寄った作風とも言えるが、今後の活躍に期待が持てる一枚だ。
Sable Hills『FLOOD』のサウンド
彼らが得意とする「メロディックメタルコア+モダンメタル」のスタイルは『FLOOD』でも炸裂。
相変わらずの「メロデス」ぶりに頬がゆるみっぱなしだった。
メロディックメタルコアとして、軽やかで耳馴染みの良い「メロディ」を前面に打ち出しつつ、すべてを押し潰してしまいそうな「重さ」を感じる「ヘヴィ/ラウド」サウンドとの対比。
上記は「Sable Hills」が一貫して表現し続けているスタイルでもあるが、本作で聴けるクオリティはもはや職人の域に達している。
豊富な情報量、タイトでスリリングな演奏も相まって、1曲目「Flood」を再生すれば一瞬で彼らの世界に引きずり込まれるはず。
そして、メロデス好きの琴線に触れる、身悶えるほど叙情的でクサすぎるフレーズのオンパレード。
日本人ならではの感覚で紡がれるメロディは『FLOOD』でまた一歩進化を遂げていた。
「Sable Hills」に類似する邦楽バンドはいくつか聴いているけど、ここまで「リリカル」を感じさせるバンドは正直少ない。
本作を聴かないメタル/ラウド好きは人生損するレベルなので、どこかのタイミングでぜひとも聴いてもらいたい。
Sable Hills『FLOOD』レビューまとめ
ということで、Sable Hillsのシングル『FLOOD』をレビューしてきた。
ボーカルの変化がどうのこうのと御託を並べてきたが、相変わらず良質な「メタル」サウンドにこだわった、ファンの期待を裏切らない素晴らしい作品になっている。
先日、ドイツで開催される大型フェス「Wacken Open Air」への出演が決まった「Sable Hills」。
来年の今頃はとんでもなく大きなバンドになっているかもしれない。
特に邦楽ラウドロックファンは今のうちに過去作品もチェックしておこう。
それではまた。
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