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世界よ、これが日本のグランジだ。w.o.d.『1994』レビュー&感想

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ニルヴァーナ直系のピュアなグランジを鳴らすオルタナティブロックバンド「w.o.d. (ダブリューオーディー)」。

 

つい先日彼らのデビュー作である『webbing off duckling』をレビューさせていただいた。

ほぼ同時期に聴いた2ndアルバム『1994』の出来も素晴らしかったので、この感動が冷めないうちにさっそく紹介していきたいと思う。

 

 

w.o.d.『1994』収録曲

  1. 0
  2. QUADROPHENIA
  3. Mayday
  4. ハロウ
  5. サニー
  6. THE CHAIR
  7. HOAX
  8. セプテンバーシンガーズ
  9. 1994

 

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w.o.d.『1994』総評レビュー

☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3/4/6/7/9

 

 

グランジバンドとしての矜持を高らかに鳴らした1stアルバムと甲乙つけがたい完成度。

 

タイトルの『1994』カート・コバーンがこの世を去った年。

 

そして、w.o.d.のサイトウタクヤ(Vo.G)、Ken Mackay(B)の生まれた年でもある。

 

このエピソードからして、「w.o.d.」と「グランジ」に運命めいたものを感じるわけだが、本作もある種”セルフタイトル"的な意味合いを持たせている所が何とも憎い演出である。

 

 

 

『1994』は極めて骨太なサウンドによるシンプルに響く演奏が特徴。

 

スリーピースバンドの強みでもあると思うが、そこに無駄な音はいっさい無いと感じられるだろう。

 

作風としては、前作の延長線上にあるというかほぼそのままなのだが、サウンド、歌ともにこなれてきた。

 

ニルヴァーナからの影響は前作同様色濃く出ているものの、より緻密でクレバーになったギターサウンドからは"w.o.d.らしさ"が溢れ出ている。

 

 

初期衝動に正直な、勢いのある前作ももちろんカッコいいが、本作は、未だ冷めない初期衝動を感じさせながらも、より"聴かせる"ことを念頭に楽曲制作したことが随所で感じられる。

 

聴かせることを念頭に置いたという点で、本作は歌メロもよりポップになっている印象だ。

 

特に9曲目の「1994」は激しいロックンロールサウンドなのだが、歌は前作でも聴けた邦ロック的なアプローチをさらに押し進めたような感じで、一部BUMP OF CHICKENを彷彿させるなどメロディラインが非常に印象的だった。

 

 

それまでは内輪で楽しいだけでやってて、それは大事なんですけど、どういうのをやればカッコ良いかなとか、外も意識するようになってきました

出典:ぴあ

サイトウタクヤ(Vo.G)のコメントを見ると、彼が意識的に楽曲を変化させたことが分かるが、思惑通りの作品としてきっちり仕上げるセンスは、やはり非凡なものを感じさせる。

 

 

前作と比較し、計算のうえ緻密な楽曲になったとはいえ、相対的に見れば相変わらずやっていることは非常にシンプル。

 

グランジをはじめ「ガレージロック」「ヘヴィロック」の影響が垣間見える楽曲の力強さ従来通りまったく変わっていない。

 

緻密とは正反対の、ワイルドな攻撃性をストレートに放っている。

 

普遍的なカッコよさにも溢れているので、グランジ云々関係なくギターロックが好きなら琴線に触れることうけあい。

 

 

"グランジの良さ"というのは人によって様々だと思うけれど、筆者は、ネガティブを掻き消す楽曲の爆発力に魅力を感じている。

 

尤も、ロック自体がそういった要素を孕んでいるものだ。

 

しかし、グランジはその"爆発力"で「鬱屈や痛みから解放してくれる」という点が、他ジャンルより秀でている部分だなと勝手に解釈している。

 

そして、w.o.d.からも同様に圧倒的な爆発力を感じるのだ。

 

 

これは、「グランジ」という形骸化されたサウンドをただなぞっただけでは出せない部分ではないだろうか。

 

精神性を含めた、w.o.d.のこだわりや信念が音に宿っているからだと思う。

 

 

音楽ブロガーの悪い癖でついつい小難く表現してしまうけど、要するにグランジロックバンドとして彼らは本物だということ。

 

もちろん、そんなものはあくまで筆者の私見なのだが、『1994』を聴けば少しは感じとってもらえると思っている。 

 

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w.o.d.『1994』サウンド

前項でも述べたが、ギターサウンドの変化が如実に感じられる。

 

突進力や疾走感といった勢いを保ったまま、知的なフレーズを矢つぎ早に放ってくるので否応なしにテンションが上がってしまう。

 

輪郭のはっきりとした鋭角的なサウンドなため、どんなプレイをしているのかがはっきり感じ取れる点もポイントが高い。

 

 

w.o.d.を語る上で外せないのが嫌でも鼓膜を直撃する個性的なベースサウンド

 

本作でも思い切り歪ませたベースの音圧は驚異的で、他のバンドではなかなか味わえないだろう。

 

ではここから収録曲すべてを簡単に解説していきたいと思う。

 

#1「0」

転がるようなイントロのギターリフを聴いた瞬間「キターーー!!」と歓喜することけあいの開幕を飾るにふさわしい珠玉のオープニングナンバー。

 

16分でタイトに進んでいくドラムと、相変わらずの轟音ゴリゴリベースが心地良い。

 

2:25からのバンドアンサンブルは鳥肌もの。

 

 

#2「QUADROPHENIA」

一曲目と同系統のキャッチーなギターリフでスタートし、楽曲の1/3はこのリフが鳴っているという構成。

 

#1 ⇒ #2の流れが完璧で、このアルバムが名盤であることを予感させるには十分すぎる仕掛けである。

 

リスナーなら誰しもが世界観に引きずり込まれる逃れられないパワーも感じさせる。

 

個人的に、イントロのリフは本作でも屈指の出来だと思うので、中盤にもう一度挿入してもよかったかなと思う。

 

 

#3「Mayday

Smells Like Teen Spirit」のオマージュかなと思わせる楽曲構成がニクイ。

 

 

通常こうした「○○に似ている楽曲」というのは、あざとさが見え隠れして時には寒くなったりするもの。

 

しかし、「Mayday」からはそうしたマイナス要素が感じられない。

 

一度完全に消化して自分たちの音楽として再構築出来ているからかなと思う。

 

 

#4「ハロウ」

シンプルなギターとボーカルのみで幕を開け、露わになった剥きだしのリアルな歌が響きわたる。

 

バンドアンサンブルが始まってからも歌の力強さは失われず、楽曲の中で最後まで存在感を放っていた。

 

 

#5「サニー」

4曲目に続き歌心に溢れており、サイトウタクヤのボーカルがたっぷり堪能できる。

 

より"グランジ"が色濃く出た爆発力のあるサウンドのおかげで、ロックのざらついたカッコよさも同時に味わえる贅沢な曲である。

 

 

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#6「THE CHAIR」

いずれもシンプルなプレイながら、各パートにソロ的な聴かせどころが用意されている疾走感抜群の一曲

 

1:20辺りから始まる、マシンガンのように連打されるスネアが最高に心地良い。

 

1:57~のカオスに混ざり合うサウンドも聴き逃せないポイント。

 

 

#7「HOAX」

Bメロ、サビ以外で終始鳴っている、ブラッシングを効かせたリズミカルなギターカッティングがかなり印象的。

 

極めて主張が激しいギターサウンドなのだが、ベース、ドラムも負けず劣らず前に出てこようとしている。

 

にもかかわらず楽曲としてバランスを破綻させることなく、極上のバンドアンサンブルに仕上げてくる所が凄い。

 

あっさりやっているように聴こえるが、相当練り上げられたアレンジだと思う。

 

 

#8「セプテンバーシンガーズ」

穏やかなアルペジオで幕を開ける、歌詞の世界観も含めセンチメンタルな一曲。

 

『1994』の中で、最も"歌"を意識した楽曲になっており、サイトウタクヤのメロディメーカーとしての才能がひしひしと伝わってくる。

 

エモーションを孕んだサイトウの歌声は、この曲のように優しさを表現する際にも強力な武器になるのだと実感できた。

 

 

#9「1994」

『1994』のラストを飾る、軽快なロックンロールが響き渡るタイトルトラック。

 

若さゆえの"勢い"や良い意味での"青さ"を、"ロックの初期衝動"と共に真空パックして楽曲に閉じ込めたかのようだ。

 

個人的な感覚だが、この曲からは「グロリアスレボリューション」辺りのBUMP OF CHICKENを彷彿とさせる。

 

 

w.o.d.の一貫したスタイル「シンプルにかっこいいロックを鳴らす」

 

それをこの曲が代弁しているような気がする。

 

だからこそ自分たちのルーツである「1994」というタイトルを付けたのだろう。

 

そして、今後の活動も変わらぬスタンスで突き進んでいくという意思表示でもあると思うので、次作への期待はますます高まるばかりだ。

 

 

w.o.d.『1994』レビューまとめ

ということで、筆者激押しのグランジロックバンド「w.o.d.」の2ndアルバム『1994』をレビューしてきた。

 

"シンプルだけどカッコいい"というのは、実はかなり難しいこと。

 

音数が少ない中でカッコよく聴かせるには、やはり天性の才能が必要だと思う。

 

w.o.d.は、他のバンドが苦労しても出来ないことを、二枚のアルバムでサラッと我々に提示して見せた。

 

もちろん血反吐を吐く想いで日々努力しているだろうし、どうすればリスナーに響くのか悩んで眠れないなんて一度や二度ではないはず。

 

ただそれは多くのバンドが経験している事であり、その中でクオリティの高い作品を提示できるのは類まれなる才能があってこそだと思う。

 

 

まだ実績が伴っていないが、日本を代表するグランジロックバンドとして彼らを加えたい気持ちで一杯だ。

 

大袈裟な記事タイトルにしたのはその所為もある。日本のグランジに造詣が深い人からすればお笑い草かもしれないが。

 

いずれにせよ、w.o.d.には邦ロックを引っ張っていく存在になってもらいたいし、今以上に多くのロックリスナーに聴いてもらいたい。

 

それではまた。

 

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