期待を超える名盤 w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』レビュー&感想
当ブログで激プッシュしているグランジロックバンド「w.o.d.」。
彼らの3rdフルアルバム『LIFE IS TOO LONG』 が本日2021年3月31日にリリースされたのでさっそくレビューしていきたい。
結論からいえば、1st、2ndの聴きどころをぎゅっと凝縮させた現時点での最高傑作と言っていいだろう。
前二作のレビューはこちらです
w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』収録曲
- Hi, hi, hi, there.
- モーニング ・ グローリー
- 楽園
- BALACLAVA
- 煙たい部屋
- relay
- 踊る阿呆に見る阿呆
- PIEDPIPER
- sodalite
- あらしのよるに
w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』総評レビュー
☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3/4/7/9/10
サウンドから感じるアグレッシブさ、ダイナミズムは前二作を凌駕するレベルに到達している。
これまでを踏襲した「グランジ」「ガレージ」を軸としたアレンジは良い意味で相変わらず。w.o.d.の"王道スタイル"がすでに確立されたと捉えることも出来る。
『LIFE IS TOO LONG』は三枚目のアルバムなので、サウンド的に少し落ち着くかなと思っていたけどそんなことはなかった。
蓋を開ければ"守りに入る"とは正反対、胸を躍らせる"攻め"のサウンドが作品全体を支配している。ざらついた音像が飛び交うヒリヒリしたロックの衝動が本作でも十分に味わえた。
1stから一貫している"流行"を一切無視した尖った楽曲たち。
w.o.d.の鳴らすサウンドは、飽和した邦ロック界において非常に頼もしい存在である。
本作は2ndアルバム『1994』の延長線上にある作風で、轟音が迫る激しいサウンドと、絶妙なポップセンスに彩られた歌メロのバランスはさらに洗練されたと言っていい。
1stアルバム『webbing off duckling』は良い意味で勢いが目立つ作風だったけど、本作は1stのアグレッシブさ、2ndの洗練された雰囲気が見事に融合したセンスあふれる一枚である。
こうした楽曲の変化は、先にサウンドを固めたあとで歌メロを乗せる手法が影響しているようだ。
元良:メロが完全後づけの曲が増えたよね。
サイトウ:2枚めの途中ぐらいから、リフやったり構成やったりフレーズを大事にしながら、その上にあえて外したメロディを乗せるみたいなことをやり始めたんです。メロの面白さと、演奏の俺らなりのかっこよさみたいなもののバランスがとりやすくなったかな。
出典:SPICE
上記のインタビューを読むと、2ndで急激にポップな印象になったのはこの手法のおかげだと納得できた。
つまり、彼らの信条とする「ラウドなサウンド」にこだわったまま、メロディをより際立たせることを意識し始めたということ。
本作『LIFE IS TOO LONG』の完成度を鑑みれば、上記の手法がある程度形になってきたと言えるだろう。
とはいえ、後からメロディを付けるなんて珍しくもないし、実は筆者の作曲方法がまさにこのやり方。
ただ、先にトラックをある程度固めてしまうと、しっくりくるメロディを乗せるのは意外と難しい。
人によって向き不向きがあると思うけど、そもそも後付けでメロディを乗せるにはかなりのセンスが必要だと思う。どちらかといえば、先にメロディがあった方がサウンドは構築しやすい気もする。
本作はメロディに関して違和感を感じることはなかったと思うので、サイトウのセンスが優れている事の証だろう。
また、あとからメロディを乗せるメリットはいくつかあるけど、サウンドとのギャップが生まれやすくなるのもその中の一つ。
「このメロディにこのフレーズは意外(逆も然り)」といった驚きが生まれやすくなる。
サイトウタクヤが「あえて外したメロディを乗せる」と語っているように、w.o.d.の楽曲から感じるインパクトの秘密が少しだけ理解できた。
上述したけど、歌メロのキャッチーさは前作を上回っている。相変わらず暴れまくるサウンドと相まってポップもラウドも同じ濃度で楽しめる。
結果的に楽曲の情報量は格段に上がったので、その点も注目して聴いてみてほしい。
本作のポップさを語る上で避けて通れないのが「サイトウタクヤ」のボーカルだ。
ぶっきらぼうな雰囲気も彼の魅力ではあるけど、『LIFE IS TOO LONG』で聴ける彼の歌からは、メロディに沿って丁寧に言葉を届けようとする強い意志が感じられた。
元々はボーカルに対しての意識が低く、あくまでギターありきのボーカルだと語っていたし、そもそも「歌う」ことに自信が持てなかったようだ。
だが、作品をリリースするうちに歌も評価されるようになり、徐々にボーカリストとしての意識が高まっていったらしい。
2ndアルバム「1994」に収録されていた『サニー』は、非常に歌を大切にした楽曲である。
曲を書いたサイトウ自身も「あれを作れるんやって思ったときは自分でもびっくりした」と語っている。
そう考えると、2ndを作っている段階で、ボーカルに対する変化は本人が考えている以上に無意識下にあったのではないだろうか。
本作では上述した"意識"の変化をはっきり認識した上で制作されているはずで、飛躍的な歌の成長に繋がったのはそのおかげだろう。
w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』サウンド
w.o.d.といえば、「一発録り」にこだわるバンドだと以前のレビューで言及した。
あえて作り込まず、バンドサンブルの妙味やライブ感を重視した結果なのは予想するまでもない。
それが、上記の「楽園」を作ったことで、1stから続く「一発録り」のこだわりにとりあえずの"達成感"が得られたようだ。
「楽園」はレコーディングでもライブ感がすごかったんですよ。それをマジの編集一切なしで完成させられて、演奏のクォリティと熱量のピークがパツンパツンに詰まった状態にできた感じがするんですよね。ほんまにやり切れたから、一発録りにこだわりすぎるところから解放された感じがします。
出典:SPICE
実際、2曲目「モーニング・グローリー」ではギターソロを後から重ねている。
次作では「重ね録り」や「編集」がさらに増えるのかもしれないけど、それで楽曲が良くなるならいくらでも導入すればいいし、さらに幅が広がることへの期待感の方が勝っている。
アルバムレビューの度に言及してるけど、w.o.d.はベースサウンドの主張が激しい最高のロックを聴かせてくれる。
本作もベースに期待していたのは言うまでもないが、一曲目の「Hi, hi, hi, there.」はいきなりベースから始まる曲だったので思わず鳥肌が立ってしまった。
1/2/4/7/9曲目が特にベースの目立つ楽曲なので、Ken Mackay(ケン マッカイ)のプレイが気になる方はぜひチェックしてみてほしい。
ベースと双璧をなすギターサウンドは、アルバムリリースを重ねた事でこなれ感もあるけど、まだまだ初期衝動の宿る荒々しさに満ちている。
全体的に歌メロが際立っているため、相対的にサウンドのインパクトが減退したと感じるリスナーもいるかもしれない。
しかし、歌と演奏を切り離して聴いてみると、1stアルバムで顕著だったソリッド感やアグレッションが至る所で感じられるのでしっかりと聴き込んでみてほしい。
正直フレーズ自体はそこまで大幅に進化したわけではなく、あくまで2ndの延長線上だけど、ほとばしる"安定感"のおかげで前作より聴き応えがあった。
そもそも2ndのサウンドはかなりのクオリティだと思うので、あれを超えるのは並大抵では難しいだろうし、2ndに肩を並べているだけでも普通に考えれば凄いことだ。
その上で、メロディや歌唱など"歌"の総合的な魅力は2ndを大きく凌駕している。その点を考慮して現時点での最高傑作だと評価させてもらった。
w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』まとめ
ということで本日3/31にリリースされたばかりの w.o.d.『LIFE IS TOO LONG』をレビューしてきた。
長々と御託を並べてきたけど、w.o.d.好きを裏切らない出来で、絶対気に入ってもらえると思うのでぜひチェックしてみてほしい。
それではまた。
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