アルバムを聴くことで得られる2つのメリット|音楽で人はもっと感動できる
近年、音楽サブスク(ストリーミングサービス)の普及で、アルバム単位で音楽を聴かないリスナーが増えているようだ。
「DJ Mag」の記事によると、音楽ストリーミングサービス『Deezer』がイギリスの音楽ファン2000人以上にアンケートを実施。
対象者の42%が、アルバム収録曲のうち"お気に入り"だけをプレイリストに追加し、同アルバムの他の曲は聴かないスタイルを採っていると伝えていた。
その理由は「音楽を聴く時間がない」という返答がほとんど。
また、一日のうちでアルバム視聴にあてる時間は17分だそうだ。この数字は世界平均である26分を下回った。
そして、25歳未満の回答者の15%が
「アルバムを、始めから最後まで通して聴いたことがない」
というデータが出ている。
決して多くないサンプル数ではあるが、アルバム単位で楽曲を楽しまない層がこれだけいるのは正直驚いてしまった。
こうしたリスナーの動きを察知し、アルバムリリースを控え「シングル」「EP」などを中心に展開しているアーティストも少なくない。
以前にも増して「音楽消費」と声高に叫ばれる昨今。サイクルの速さに対応するにはこうした流れも致し方ないが、リスナーのアルバム離れはますます加速するかもしれない。
一言でいえば「音楽のビジネスモデルが変化した」ということだけど、"アルバム派"の筆者としては非常にやるせない気持ちだ。
近年は、聴きたい曲があればすぐにアクセスできる環境が整っている。
そのおかげで、供給量自体は増えていると思うけど、「音楽」自体の希少性は日増しに低下しているのではないだろうか。
音楽サブスクなんて、CD購入やレンタルしていた時期と比較すれば、ほぼタダみたいなものだ。
音楽はYouTubeだけ済ませるという層もいるだろう。
このように、現在の音楽は「タダ(同然)で聴くのが当たり前」という認識になってしまった。
情報やノウハウなんかも同じだけど、人間は無料で与えられた物に価値を見いだせない生き物だ。
対価を支払うことで有難がり、本来の価値を見出すことができる。
音楽の価値が低下した要因として、既存のリスナーが音楽以外の娯楽にお金を使うようになったからなんて言われている。あとは単純に音楽業界が手をこまねいていたせいもあるだろう。
いずれにせよ、ここまで大きな流れに逆らうことは不可能だし現状を憂いても仕方がない。
これまでも、レコード ⇒ カセットテープ ⇒ CD ⇒ MDと、時代に合わせてフォーマットを変化させてきた。
そう考えると、現代人のライフスタイルに合わせたストリーミングの台頭は必然だったのだろう。
音楽が軽んじられているとはいえ、アルバム自体がそう簡単に無くなるとは思わないけど、リスナーの多くが必要としなければ、いつかは消滅してしまうかもしれない。
まじすか!いま作ってるのに! pic.twitter.com/iXN91VnYYZ
— lynch. 葉月:|| (@hazuki_lynch) March 20, 2018
今回は、こんな時代だからこそあえて「アルバムで音楽を聴くこと」で得られるメリットについて語っていきたい。
アルバムを聴くことで得られる2つのメリット
シングル曲はアルバムに収録されることで生まれ変わる
以下の記事にもあるように、最近は特定アーティストのファンになるリスナーが減っているようだ。
自分と同じだと思う人は多いかも?好きな曲はあるけど好きなアーティストはいない!
「好きな曲」ということは「代表曲」ばかりだろうし、そのほとんどは「シングル曲」だと考えられるので、そこから本項のテーマに選んだ。
聴き慣れたシングル曲も、アルバムに収録されることで再び魅力を放つ場合がある。
アルバムは、コンセプトの有無にかかわらず、その作品特有の"色"というものが概ね存在する。
それがアルバムの"物語性"を生み、世界観を構築するのだと思う。
シングル曲がアルバムに収録されることで、物語を担う一つのピースとなりガラッと表情を変える。
たとえばバラードのシングル曲なんかは、単体だと「良い曲だな」で終わる可能性があるけど、アルバムラストに配置されている場合は、作品全体を総括するスケールの大きさも付与される。
特に、「名盤」と呼ばれるアルバムは、曲順通りに聴くことでシングル曲が全く違って聴こえるから本当に面白い。
パッと思いつく例として、90年代中盤~後半のL'Arc-en-Cielのアルバムは特に神懸かっている気がする。
こうした感覚は、ストリーミングで一曲ずつピックアップしていたら一生味わえない体験だと思う。アルバム単位で音楽を聴いている者のみに与えられた特権ではないだろうか。
つまり、まったく同じ曲でも「アルバム全体の世界観」や「前後の曲の雰囲気」などで表情が変化するため、聴き慣れた曲も違った楽しみ方が出来るということ。
物語性を感じることが出来る
前項で「物語を担うピース」について語ったけど、それは何もシングル曲に限った話ではない。
アルバムのみに収録された曲も『アルバム』の世界観を形成するピースの一つなのだ。
つまり、アルバム単位で聴いてはじめて、個々の楽曲が放つ世界観がより鮮明なものになる。
たとえば、アルバム1曲目は、これから始まる物語の幕開けを予感させる壮大さや勢いが感じられるだろう。
そしてアルバムラストの曲は、最後を飾るにふさわしい極上の余韻を与え、アルバム全体はもちろん他の収録曲の説得力も増幅させてくれる。
ただしこれは、アルバムを曲順で聴いてこそ感じられる事であり、それぞれ単体で聴いた場合はそうならないことがほとんどだと思う。
アルバムという"物語"に組み込まれることによって、独特の味わいが生まれるということだ。その結果、楽曲の真の価値を見出すことができると思っている。
同時に、アーティストが本当に伝えたい事は何なのか、その真意も見えてくるはず。
"アルバム"というフィルターを通すことで、楽曲だけでなくアーティストの新たな魅力に気が付ける可能性もあるのだ。
アルバム単位で音楽を聴かないリスナーは、本来なら享受できたはずの感動を自ら放棄しているように見える。
それはあまりにももったいない。本当に気に入ったアーティストだけでも構わないので、一度アルバム単位で音楽を楽しんでほしいと思う。
おまけ:シークレットトラック
アルバムには「シークレットトラック」が収録されている場合がある。
「シークレットトラック」とは、アルバムの曲名が記載(クレジット)されていない隠された楽曲のこと。ファンやCD購入者のためにサプライズで収録されるケースがほとんど。
よくあるのは、最後の曲が終わったと思ったら、突然別の曲が始まるというパターン。
この他、アルバム本編の中盤に突然流れ始めるパターンも存在する。
これ実は結構歴史が古くて、ビートルズが1967年にリリースした「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」には「Sgt. Pepper Inner Groove」というシークレットトラックが収録されている。
邦ロックで有名なのは「BUMP OF CHICKEN」だろうか。
彼らは、一部のシングル、アルバムの初回限定特典映像ディスク、および映像作品を除き、リリースされた作品(CDのみならず、DVD・Blu-rayも含む)全てに隠しトラックを収録するという徹底ぶり。
こうした「シークレットトラック」はサブスクでは配信されないことがほとんど。
「アルバムを聴かない」ということはCDを購入することもないので、シークレットトラックが実質聴けないということになる。
仮に配信されている場合でも、アルバムを通して聴くことで、はじめて感じられる驚きや嬉しさがあると思う。
好きなアーティストのアルバムに浸っていたら、突如として情報にない曲が始まるのだ。実生活ではなかなか体験できないエキサイティングな出来事ではないだろうか。
バンプのように、シークレットトラックの収録が半ば"お約束"になっている場合でも、アルバム本編を聴き終えたから味わえる独特の趣がある。
ただし、これには一つ難点があって、シークレットトラックが始まるまで長い無音状態が続く場合があるのだ。筆者はサプライズの演出として楽しんでいるけど、我慢できない人もいるはず。
あと、そもそも「アルバム」というのは本編のみで完結している物がベストだと思う。
ボーナストラックやシークレットトラックはあくまで「おまけ」に過ぎないので、今回記載するにあたり文字通り"おまけ"とさせていただいた。
アルバムを聴くことで得られる2つのメリット まとめ
ということで『アルバム』で音楽を聴くメリットについてあれこれ語ってきた。
音楽好きとっては面白くない時代が到来してしまった。しかし、悲観しているだけでは何も始まらないので、今後も「アルバムの素晴らしさ」を様々な形で発信していけたらと思っている。
それではまた。
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