YUI「NATURAL」レビュー ~円熟したボーカルが楽しめるセルフカバー(リメイク)の傑作~
YUIのデビュー15周年を記念し、2021年2月24日リリースされたセルフカバー(リメイク)ミニアルバム『NATURAL』をレビューしていきたい。
筆者は普段からヘヴィな音楽ばかり聴いているが、実はYUIの大ファンなのだ。特に「CHE.R.RY」がお気に入り。
耳が疲れた際は、一服の清涼剤としてメタルの合間によく聴いている。
今回リリースされた「NATURAL」には上述した「CHE.R.RY」が収録されているため「聴かない」という選択はありえなかった。
YUI「NATURAL」収録曲
- feel my soul
- CHE.R.RY
- Rolling star
- Good-bye days
- GLORIA
- SUMMER SONG
YUI「NATURAL」総評レビュー
☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3/4/5/6
YUIはJ-POP的なアプローチをはじめ、アコースティック、ロックなど音楽性が多岐にわたるため、「NATURAL」はどんなアレンジで楽曲が再構築されるのか楽しみにしていた。
というのも、アルバム自体は「YUI」名義であるが、サウンドを担当したのは彼女も在籍するバンド「FLOWER FLOWER」のメンバーなのだ。
特にmafumafu(B)、sacchan/佐治宣英(Dr)のリズム隊は演奏クオリティが高いので期待せずにはいられなかった。
結果的にこれが大成功で、パッケージされたサウンドはオリジナルにはない抜群の安定感。
特に「Rolling star」のようなロックナンバーでは顕著に表れており、音楽におけるリズムの重要性を改めて再確認できた。
全曲に該当するがドラムがパワフルになっているので、そこを意識して聴くとまた違った楽しみ方が出来ると思う。ロックナンバー以外でもドラムの変化は如実に感じられるはず。
個人的にリメイクのスネアの音がかなり好みでオリジナル音源の10倍は好き。
パワフルだからといってYUIの歌を邪魔している訳ではないし、卓越したスキルの高さがうかがい知れる。
ベースも存在感のあるサウンドで、隙間を埋めるプレイではしっかりと主張していたし、全曲にわたって堅実にボトムを支えていた。
正直オリジナルは音に厚みがないと感じる物がいくつかあったため、本作でリズム隊がパワーアップしたことはかなりの高評価。
もちろんJ-POPに寄せるため、あえてやっていたという側面もあると思う。だから、善し悪しの話ではなく単に筆者の好みの問題なのであしからず。
「NATURAL」におけるYUIのボーカル
「NATURAL」では圧倒的な進化を遂げたYUIのボーカルもたっぷりと堪能できる。
まずは何と言っても豊かになった表現力に驚かされるはず。
YUIは「歌が下手」だと揶揄されることもある。
単純な歌唱力で言えばたしかに上手いと言えないかもしれない。
Superflyのようにビブラートを効かせ力強く歌い上げるボーカルでないのも下手だと思わてしまう要因だろう。
しかし、YUIの武器は単純な歌唱力ではないと思う。
彼女の強みは、あどけない少女が囁くような儚くも透き通る歌声ではないだろうか。
それはYUIにしか出せない声。つまり圧倒的な「個性」なのだ。
筆者は「個性」も歌の上手さの一つだと思っている。
少し想像してみてほしい。
「ただ歌が上手い」ということよりも、誰も真似できない「個性」を備えている方がアーティストとしては魅力的に見えるはずだ。
技術的な上手さではないアーティストとしての巧さ。
上記を踏まえ「NATURAL」を聴いてみてほしい。
従来の個性を損なうことなく歌唱力が単純にアップしている事が分かるだろう。
楽曲に合わせボーカルスタイルを巧みに変化させている。
「NATURAL」にはちょうど正反対のタイプの曲が収録されているため比較しやすいのではないだろか。
また、年齢を重ねたことで女性らしいしなやかな表現力を身に付けており、それは時に艶めかしくもある。
といっても完全に大人の女性になってしまったわけではなく、YUIの強みである「少女性」も失われていない。
これはセルフカバーだからこそ気付けたことであり、FLOWER FLOWERの楽曲ではここまで感銘を受けることはなかった。
YUIの成長を感じたいリスナーは「NATURAL」を絶対に聴くべき。
YUI「NATURAL」レビュー まとめ
ということで、リリースしたばかりのYUI「NATURAL」をレビューしてきた。
YUIは思い入れが強いので少々暑苦しい文章になってしまったが、良い作品になっているのでYUIを知らないリスナーにもぜひ聴いてもらいたい。
そして、本文でも述べたように、比較して聴くことで彼女の成長が如実に感じられるため旧来のYUIファンにもおすすめである。
それではまた。
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