もう一息ほしいところ THE CROWN『ROYAL DESTROYER』レビュー&感想
スウェーデン出身のメロディックデス/スラッシュメタルバンド「THE CROWN」が2021年3月10日にリリースした約3年ぶりのアルバム『ROYAL DESTROYER』をレビューしていきたい。
賛否両論だった前々作「Death Is Not Dead」は好みの音ではないというのが正直なところ。
前作は、往年の名盤である「DEATHRACE KING」を手掛けた「フレドリック・ノルドストローム」を再びプロデューサーに起用したということでワクワクしていたが、こちらも想像を超えるような作品ではなかった。
そして本作でも再び同プロデューサーとタッグを組んだということで半信半疑ながらとりあえず聴いてみることにした。
THE CROWN『ROYAL DESTROYER』収録曲
- BAPTIZED IN VIOLENCE
- LET THE HAMMERING BEGIN!
- MOTORDEATH
- ULTRA FAUST
- GLORIOUS HADES
- FULL METAL JUSTICE
- SCANDINAVIAN SATAN
- DEVOID OF LIGHT
- WE DRIFT ON
- BEYOND THE FRAIL
- ABSOLUTE MONARCHY
- DAWN OF EMPTINESS (DEMO) [BONUS TRACK]
THE CROWN『ROYAL DESTROYER』総評レビュー
☆おすすめ曲 ⇒ 2/3/6/7/11
前作、前々作の気に入らなかった点はなんとなくハードコア色が強かったこと。そのせいでモッサリした感じがあってデスラッシュのキレや疾走感があまり感じられなかったのだ。
デスラッシュといえば筆者の中では「EBONY TEARS」の『A Handful Of Nothing』が絶対王者で、そこを基準に厳しく評価してしまうのが悪い癖だと思う。
しかもTHE CROWNには「DEATHRACE KING」という大名盤まであるので尚更ジャッジが厳しくなってしまう。
したがって、物理的に速い刻みだとしても、一音一音にキレがなければ鈍重だなと感じてしまい、デスラッシュとしては優れていると評価できないのだ。
上記を踏まえて本作の評価は、おすすめに挙げた曲以外は現段階でピンと来るものはなかった。
まだ一周聴いたのみなので今後評価は変わるかもしれないが第一印象はそんなところ。
終始デスラッシュやデスロール的な突進力はあるのだが、ただ速いだけでサウンドにキレが宿っていない気がする。
重さは申し分ないと思うけれど、食材を包丁で切らなくてはいけないのにひたすら金槌で殴っているような感覚もあった。
ドラムの交代劇もキレという面でかなりのマイナスになっているのではないだろうか。あの隙間を埋める手数の多いドラミングはやはり驚異的だ。
ただ、あくまで主観的な意見であり単純に音作りの好みもある。
上述したように、THE CROWNの新譜という事で厳しめにジャッジしていることも影響しているだろう。
個人的には良曲駄曲の差がはっきりしている印象だけど、客観的に捉えればこれはこれで全然アリだと思う。
それに「デスラッシュ」としての評価なので、本作を「メロデス」と捉えるとまた感想は違ってくる。
叙情的なフレーズは前作の流れを汲んで健在だし、メロデスとして楽しめるボーダーラインは十分クリアできているのではないだろうか。
それに、筆者のように斜に構えて聴かなければ、前作より聴きどころは多いかなという印象。
サウンド面で少し気になる所はあれど、『Death Is Not Dead』(2015)からバンドに復帰したヨハン・リンドストランドのボーカルは本作でも光っている。
毛細血管が何本かブチ切れていてもおかしくない極悪な怒号を轟かせながらリリックを吐き捨てるボーカリゼイションは圧巻。これは文句なしにカッコいい。
THE CROWN『ROYAL DESTROYER』レビューまとめ
ということで、THE CROWN『ROYAL DESTROYER』のレビューをしてきた。
THE CROWNということでハードルを上げ過ぎてしまったが、本作の方向性でブラッシュアップしてくれれば次作は期待以上の物を届けてくれると思う。
それではまた。
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