秋山黄色「体に良くない『POPS』」 2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』レビュー【秋山黄緑】
秋山黄色 (読み方:あきやま きいろ)が3月3日にリリースした2ndアルバム『FIZZY POP SYNDROME』をレビューしていきたい。
バイラルチャートでかなりバズったと聞いていたが、このタイミングでようやく聴くことが出来た。
米津玄師に似ているという声もあったので、イメージしていたよりロックなアルバムだなというのが第一印象。
秋山黄色『FIZZY POP SYNDROME』収録曲
- LIE on
- サーチライト
- 月と太陽だけ
- アイデンティティ
- Bottoms call
- 夢の礫
- 宮の橋アンダーセッション
- ゴミステーションブルース
- ホットバニラ・ホットケーキ
- PAINKILLER
全作詞・作曲::秋山黄色
秋山黄色『FIZZY POP SYNDROME』総評レビュー
☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3/4/5/6/7/9/10
1stアルバムは一切聴いていないので表現が間違っているかもしれないが、ここまで分かりやすいロックサウンドが世間一般に受け入れられているという事実に驚いた。
ある程度キャリアのあるアーティストならどんなサウンドでも支持されるだろうけど、秋山黄色は2018年頃に頭角を表し始めたいわば新人である。
そう考えると、単純に曲さえ良ければ評価される土壌が日本の音楽業界に残っていたのは単純に嬉しい。
記事タイトルの「体に良くない『POPS』」というのは秋山自身のコメントから引用した。
一筋縄ではいかないこのご時世に、自分が音楽から引き出せる力ってなんだろう?その答えを詰め込みました。体に良くない「POPS」ですが、あなたの苦しみが「苦くておいしい」に変わるかもしれません。是非一度注いでみてください。
出典:ぴあ
本作『FIZZY POP SYNDROME』をひとことで表すと、刺激的で少し毒気のあるポップロックといった感じだろうか。
アルバム全体を支配するのはギターの目立つロックサウンドだ。
目立たない所でマニアックなプレイもしているのだが、表面上は耳触りよく仕上げられている。そして、サウンドの上にはもれなくグッドメロディが乗せられている。
秋山のボーカルは、ピッチが安定し歌詞が聞き取りやすい上に、癖のないタイプの声。
歌い上げるスタイルではないけれど、とりあえずロックシンガーとしては及第点以上だし、決して下手なボーカリストでもない。
最近はこのタイプのボーカリストって少ない気がする。
中島卓偉のような芯のある声で個人的にそれだけでかなりポイントは高い。
幅広い表現力や歌い方のクセは感覚ピエロの「横山直弘」に似ている気もする。
アルバムを一枚しか聴いていないが、総合的にかなり高いポテンシャルを秘めていることは分かった。
彼のような音楽が正当に評価されて本当に良かったと思う。
ただし、『FIZZY POP SYNDROME』は粒揃いの作品ではあるものの、メディアが騒ぎ立てるような目新しい要素はないと思う。
ネガティブな表現をするなら過去の”焼き直し”が目立つ。
幅広い年代の音楽を通過していればいるほど、秋山のサウンドは既聴感を抱くことだろう。
一部の音楽ファンから米津玄師に似ていると言われるのは、こうしたサウンドが一因かもしれない。
ただし、多くの現代音楽は所詮過去の焼き直しに過ぎない。
独自のカラーをどれだけ出せるかでオリジナリティが決まるのだ。
そういった意味で『FIZZY POP SYNDROME』は秋山黄色の感性が爆発した作風だと思う。
たとえば、90年代的ロックサウンドに、現代的な歌詞を詰め込む譜割りになっていたりする点は大変ユニークである。
7曲目のような、照れ臭いほどの王道ロックサウンドにモダンテイストのリズムとメロディが乗っている新鮮さ。
あとは10曲目の「PAINKILLER」。バンドサウンド的にはありきたりだけど、ラップのような歌唱法も相まってブラックな雰囲気漂う個性的なロックナンバーになっている。わざとねちっこい歌い方なのもニクい演出だ。
秋山は中学生の頃「けいおん!」の影響でベースをはじめ「ニコニコ動画」へ投稿をしていたそうだ。ニコ動自体が好きだった事もあり、音楽は「ボカロミュージック」を好んで聴いている。
彼はいわゆる「デジタルネイティブ」世代だと思うので、ボカロを中心に自身が良いと感じればどんな音楽からも影響を受けていたはずだ。
その中でボカロP時代の米津玄師や同時期に活躍していたロックバンドから影響を受けていたことが考えられる。
そうした積み重ねを経て、「秋山黄色」というオルジナリティが確立されたのではないだろうか。
聴いたことあるのに新しい
たまにこういった印象を受ける楽曲があるけれど秋山の鳴らす音楽はまさにこれなのだ。
彼は影響を受けた過去のサウンドを現代の解釈で表現する能力に長けているのだと思う。
尤も、秋山にとっては過去ではなく現在進行形のサウンドなのかもしれない。
いずれにせよ、若いリスナーは秋山黄色を”新しい音楽”と捉えているだろう。
だからこそ彼ほどバズった人間が現在のスタイルで音楽をやっていることは称賛されるべき。過去に存在した素晴らしいロックを次の世代へ継承できるという意味ではこれ以上有益なことはない。
秋山黄色『FIZZY POP SYNDROME』サウンド
前項でも少し触れてきたが、ギターをメインとしたロックサウンドが鳴っている。
中にはボカロユニットが鳴らすロック風な物もあるけれど、2曲目のような2000年代初頭を彷彿とさせるギターロックナンバーが特に印象的だった。
個人的にはBUMP OF CHICKEN、SUPER BEVERあたりの影響が感じられる。そういったバンドサウンドの中で確かに息づいているのがボカロミュージックの要素だ。
歌詞を詰め込んだ譜割以外にも、3、9曲目他随所で聴けるリズムパターンの多くはボカロの典型的なスタイルではないだろうか。
音楽全般は普通の人より知らないと語っていた秋山だが、ボカロ以外でのルーツがどこにあるのか本当に気になる所だ。
秋山黄色『FIZZY POP SYNDROME』まとめ
話題の「秋山黄色」の感想なこんなところです。
冒頭にも書いたけれど、想像していたよりロックな曲ばかりで嬉しかった。
もはや完全にファンなので次は1stアルバムを聴いてみようと思う。
それではまた。
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