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「超越」そこに鳴る レビューと感想 バンド史上最速曲を含む超名盤1stフルアルバム

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当ブログでもたびたび取り上げているそこに鳴る

 

今回は彼らが2020年10月7日リリースした1stアルバム「超越」をレビューしていきたい。

 

 

 

 

 

 

そこに鳴る『超越』 収録曲

1. Lament moment
2. Mirage
3. complicated system -new system ver.-
4. avoided absence
5. 天秤の上で
6. 極限は刹那
7. 永遠の砂漠
8. white for
9. black to

 

 

超越/そこに鳴る 総評レビュー

☆おすすめ曲 ⇒ 1/3/5/6/7/8

 

これまで5枚のミニアルバムをリリースしてきた「そこに鳴る」の集大成であり、初期衝動も感じさせるファンなら誰もが納得できる名盤と言える。

 

いきなり褒め殺しから入ったわけだが、正直いうと最初はそこまでインパクトはなかった。

 

ひとつ前の作品であるミニアルバム「一閃(2019年リリース)」が強い印象を持っていたからだ。

 

その原因は、同作に収録された「fake fake fateという楽曲の存在。これが常軌を逸したカッコよさで、とにかく琴線に触れまくり「一閃」自体の好評価にも繋がった。

 

個人的な話だが、長年同ジャンルの音楽を聴いていると、大好きなバンドでも新譜を聴いて驚いたり感動することが少なくなる。

 

そんな中でも「fake fake fate」には度肝を抜かされたし、久しぶりに音楽を聴いて「ワクワク」を体験できた。

 

たったひとつのキラーチューンのおかげで、アルバムの印象が強まるのはメタルリスナーなら分かってもらえると思うけど、ホントにそんな感じです。

 

上記のような経緯があり、最初こそインパクトが薄かった「超越」だけど、何周も聴いていくうちに「このアルバムはヤバいな」と感じた。

 

 

そこに鳴るは4thミニアルバム『ゼロ』の辺りから、自分たちの音楽性をより明確に打ち出せるようになったと思う。

 

本作「超越」は、上述した独自の音楽性に加え、初期の作品にみられた衝動というか"カオスな感じ"も内包しており、美しさと激しさが最高のバランスで味わえる。

 

なんとなく聴くぶんには、テクニカルでいつもの「そこに鳴るサウンドである。

 

ただし、本作にはこれまでにはない"美しさ"が宿っている。

 

特にバラード曲で感じられるスケール感の大きな美しさは「超越」でしか聴けない楽曲で、幅の広がり具合に驚いてもらえると思う

 

乱暴に表現するなら、より「ポップ」になったと言えるけど、彼らならではの「毒」もしっかり注入されているので安心してほしい。

 

 

唯一不満な点を挙げるとすれば「全9曲」という部分だろうか。

 

"フルアルバム"という触れ込みだったので曲数が気になっていたけど実際は9曲。

 

ファンとしてはもう2、3曲聴きたかったというのが正直なところ。

 

曲数が多ければ良いってものでもないけど、そこに鳴るは基本的に捨て曲がないので、新曲は多ければ多いほど嬉しいのも事実である。

 

その点は次のフルアルバムでどうなるか楽しみにしておこう。

 

 

ということで、総評は以上です。次項から各楽曲のレビューになります。

 

 

超越/そこに鳴る 各曲レビュー

超越 #1「Lament moment」

アルバム「超越」のオープニングを飾る、「This is そこに鳴る」的な疾走感が際立つ珠玉のナンバー。

 

彼らにしか鳴らせない"ロック"を具現化しており、全てのスキルを注ぎ込んだかのような、圧倒的な熱量は聴く者を圧倒するだろう。

 

各パートに存在する"見せ場"は聴きどころのひとつだけど、サウンド同士のスリリングなぶつかり合いも鳥肌必至。

 

荒れ狂うサウンドの勢いは疾風怒濤という言葉がぴったりだ。

 

そこに鳴るは、鈴木重厚のギターテクニックが注目されがちだが、この曲では「藤原美咲」の繰り出す超絶的なベースプレイにもぜひ耳を傾けてほしい。

 

どこかのインタビューで「誰が聴いてもわかるように弾いた」と藤原自身も語っていたが、かなり聴きやすいベースになっているので、すぐに聴き分けられると思う。

 

 

超越 #2「Mirage

すぐに口ずさめしまうキャッチーなメロディが楽曲を支配している。そこに鳴るの中ではサウンドも比較的分かりやすいポップなナンバー。

 

メロディを最大限に活かすためアレンジは一聴するとシンプルだが、細部をよく聴いてみるとやはり鈴木氏はやらかしていた(褒め言葉)。

 

そこに鳴るは一筋縄ではいかない楽曲が多いけど、この曲もただのポップで終わらせないニヤリとできる楽曲となっている。

 

 

超越 #3「complicated system -new system ver.-」

2019年11月20日にリリースされていたシングルナンバーのアルバムバージョン。

 

シングルという事もあり、キャッチーな作風であり、ボーカルの掛け合いも存分に楽しめる。

 

サウンドはいわゆるそこに鳴る重厚サウンドで、1曲目「Lament moment」同様、彼らのおいしい部分がギュギュッと凝縮されており、イントロ⇒アウトロまですべてが聴きどころ。

 

シングル曲との違いは正直どこかわからない。アレンジは変わっていなかったと思うので、ミックスの違いだろうか。ギターの聴こえ方が違うかなとも思うけどはっきりしたことは言えないのですみません。

 

 

超越 #4「avoided absence」

メロディ、バンドアンサンブルともに、得も言われぬ美しさを放ち、荘厳な雰囲気が印象に残るミドルナンバー。

 

クランチトーンのギターカッティングが小気味よく、絡み合うベース音とのコントラストも素晴らしかった。

 

ディストーションギターが聴こえてくると、いつもの”そこに鳴るスタイル”になるが、クランチや単音フレーズは往年のLUNASEAを聴いているようだった。「IN SILENCE」のような幻想的な感じ?

 

個人的には全体的にもう少し大人しいアレンジでも良かったかなと思う。ラストの大サビだけ轟音サウンドにすれば、より緩急がついたかもしれない。

 

 

超越 #5「天秤の上で」

藤原美咲のヴォーカルをフィーチャーしたナンバー。

 

そこに鳴る「男女ツインボーカルというスタイルで活動しているが、主にボーカル担当は鈴木重厚(Gt)である。

 

ボーカルの掛け合いが楽しめる楽曲は数多く存在するものの、やはりイニシアチブを執っているのは鈴木重厚だ。

 

過去の作品で藤原美咲がメインでボーカルを執る楽曲は4、5曲程度だった気がする。

 

それを考えると、藤原美咲のボーカルがたっぷり堪能できる「天秤の上で」は非常に貴重。

 

 

そこに鳴るの楽曲は、比較的シンプルで抑揚のないメロディであっても、サウンドだけは異常なほど情報量を持っていることが多々ある。

 

そのアンバランスさがファンを魅了しているポイントでもあると思うが「天秤の上で」も然り。

 

メロディのシンプルさと反比例するように、これでもかと音を詰め込んでいる。もう笑ってしまうレベルだ。

 

イントロ、アウトロ、間奏など歌の無い箇所ならまだわかるが、本来「歌」を聴かせるべきサビのバックであってもおかまいなし。超絶テクニックを駆使した音の嵐が吹き荒れている。「ここでそのフレーズぶっこみますかw」というありえないアレンジをかましてくるのだ。音楽理論的にそれが正解か不正解かわからないが、いずれにせよ痛快で仕方がない。

 

 

超越 #6「極限は刹那」

MVが制作された、圧巻のハイスピードナンバー。

 

インタビューで藤原美咲が語っているが、彼らの楽曲の中で最も速いそうだ。

 

ちなみにBPM300というバカみたいな速さです。

 

速い曲というだけで「凄い」と感じる人は多いと思うけど、単に「速い曲」というだけなら、作ることはかんたん。

 

また、楽に演奏できるシンプルなアレンジにすれば、演奏面でも特に問題はない。これは経験上間違いなく言えること。※ドラムだけは体力的にきついかも

 

しかし、そこに鳴るのような、情報量の多いサウンドで「楽曲」として成立させるには、それ相応の高度な技術が必要になってくる。一流のミュージシャンはそれが出来るからすごい。

 

MVをぜひ最後まで観てもらいたい(イヤホン推奨)。

 

そこに鳴るが、いかに化け物バンドかが分かってもらえると思う。

 

 

超越 #7「永遠の砂漠」

跳ねるリズムとざらついたヘヴィなサウンドが特徴のミドルナンバー。

 

全体的にダーティなサウンドで、曲全体の雰囲気もサウンドに引っ張られている。跳ねたリズムと融合することで、楽曲はダーティなだけではなく別の表情を見せるのも面白い。

 

アンバランスともいえるが、それが不思議と心地よく感じられるだろう。さらに、アンニュイなメロディラインがアンバランスさに拍車をかけている。

 

一聴して華やかさがなく、アルバムの中では地味な方かもしれないが、いわゆるスルメ曲になのでピンとこなかった方は数回聴いてみてください。

 

 

超越 #8「White for」

藤原美咲をメインボーカルに据えたバラードナンバー。MVでも主役の扱いとなっている。

 

#5曲目「天秤の上で」も藤原のボーカルが堪能できると書いたが、こちらの楽曲も藤原がメインボーカルだ。そういった意味では「超越」というアルバム自体が貴重な存在かもしれない。

 

 

「White for」は、彼らにしては珍しいくらいの真っ当なバラードナンバー。

 

「歌」を前面に押し出した、メロディを最大限活かすアレンジがなされている。

 

サビのバックなどは轟音バンドサウンドになっているものの、メロディをかき消してしまうほどではない。

 

シューゲイザー的な儚くも美しい世界観を演出しており、主役はあくまでも「歌」なのだと感じられる。

 

サウンドの美しさも相まって、結果として歌(メロディ)がかなり際立っているのだが、メロディラインの美しさも特筆すべき点だろう。

 

完全に「歌謡曲」というか「J-POP」的なメロディだと思う。

 

個人的に滅茶苦茶いい曲だと思うし、控えめにいって名曲だ。

 

掛け値なしに良い曲だと久しぶりに感じられた。バカみたいな表現で楽曲を褒めることは少ないけど、ほんとうに良い曲の場合は仕方がない。

 

本気でおいしい時に「うまい」としか言えないのと同じ。

 

 

そこに鳴るの”メインコンポーザー”は鈴木重厚である。

 

失礼な話だが、彼がここまで良いメロディを書けるとは正直思っていなかった。

 

これまで「メロディに関しては及第点」という認識だった。

 

しかし、こんな名曲を聴かされたからには「そこに鳴るといえばサウンド」というイメージをあらためる必要がある。

 

それほどにインパクトのある曲。ほんとうに良いメロディで恐れ入った。

 

 

超越 #9「Black to」

タイトルを見てもらえばわかるが、#8の「White for」と対になったバラードナンバー。

 

こちらは鈴木重厚がメインでボーカルを執っている。

 

全体的な楽曲構成は「White for」に似ている。サビでの轟音バンドサウンドも同様。

 

どちらの曲も『冬』が似合う冷たい哀愁を孕んでいるが、こちらはより無機質で冷ややかなアレンジが特徴。

 

アウトロの短さが特徴的で、唐突に曲が終わりを迎えるのはドキッとさせられた。

 

胸を締め付けるエモーショナルなメロディの秀逸さも「White for」に負けず劣らずである。個人的には「White for」に軍配が上がるが、その辺りは好みの問題でどちらも良い曲です。

 

 

 

超越/そこに鳴る レビューと感想のまとめ

安定のそこに鳴るクオリティを見せつけた「超越」というアルバム。

 

多少スタイルの変化はあるにせよ、やっていることは基本的にずっと変わらない。

 

だが、新譜を発表するたび新たな一面を見せてくれる。

 

これは簡単そうで難しく、実際にそれが出来るバンドは多くないと思う。

 

 

そこに鳴るは「凛と時雨のフォロワー」だと揶揄された時期もある。

 

プログレポスト・ハードコア、マスロックなど、鳴らしているサウンドが似通っているのだから比べられても仕方ないとは思うし、実際に雰囲気が似ていた楽曲もある。

 

だが、最近ではそんな声もあまり聴かれなくなった。

 

超越の収録曲を聴けば如実に伝わるが「凛として時雨」とは別のベクトルへ確実に向かっている。

 

次はどんな楽曲でリスナーを驚かせてくれるのか楽しみでならない。

 

それではまた。

 

 

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