『アイナ・ジ・エンド』という才能のすごさ 1stソロアルバム「THE END」レビュー
2021年2月3日リリースされたアイナ・ジ・エンド1stソロアルバム『THE END』をレビューしていきたい。
筆者はBiSHの音楽にあまり触れてこなかった。たしか3,4曲聴き流した程度だったと思う。
当然アイナ・ジ・エンドに関しても疎い。
唯一しっかりと歌声を聴いたのがhideのトリビュートアルバムに収録されていた「Bacteria」のカバーで、ずいぶん癖のある声だなという印象はあった。
今回たまたまソロアルバムが発売されていることを知ったのだが、彼女自身が全曲作詞作曲を担当しているということで俄然興味が沸いた。
ファンはもちろん同業者からも圧倒的支持を受けるアイナ・ジ・エンドの才能が知りたくなりさっそく聴いてみることにした。
アイナ・ジ・エンド「THE END」収録曲
全作詞作曲:アイナ・ジ・エンド
アイナ・ジ・エンド「THE END」総評レビュー
☆おすすめ曲 ⇒ 1/2/3/4/5/6/8/11/12
亀田誠治プロデュースによる色鮮やかなサウンドに、アイナ・ジ・エンドのハスキーボイスがさらに色彩を加える。
一回り聴いた段階でこれを書いているのだが、なるほどこれは絶賛する意味がわかる。
たいして聴き込んでもいないのに筆者はすでにアイナ・ジ・エンドの声にやられてしまった。
ビブラートを駆使するタイプのボーカルではないので、これが上手いのかどうかは分からない。
ただ上手い下手はこの際どうでもいい。この歌声は強烈な才能だ。
ハスキーで憂いを帯びた歌声は、楽曲によってその表情を巧みに変化させる。
近年ハスキーな歌声と言えば、筆者の中では「Aimer」が思い浮かぶ。
Aimerと比較すると、アイナの歌声は力強さは及ばないものの"少女性"が強く感じられる。
ポップスを歌う際は可愛らしい少女のようだ。
しかしヘヴィでシリアスな楽曲ではダウナーな歌詞も相まって、幼い少女が悲壮感に苛まれているようで胸を締め付けられる瞬間が何度も訪れた。
リスナーを楽曲の世界へ誘う"聴かせる魅惑的な声"だ。
いずれにせよ、ストレートなロックサウンドが多いBiSHでは味わえない『アイナ・ジ・エンド』の魅力あるボーカルが楽しめる作品なのは間違いない。
歌詞の暗さが良い
先程少し触れたが、ダウナー系の暗い歌詞が時折顔を見せる部分も筆者好みだった。
アイナ・ジ・エンドのパーソナルな部分はまったく知らないのだが、暗く内省的でコンプレックスを抱えている人物なのは楽曲を聴いてよく分かった。
個人的には理想のアーティストである。彼女もまた音楽に助けられた一人なのだろう。
アイナの内面を少しでも知りたいファンは本作はマストではないだろうか。
また、歌詞の暗い質感から「鬱ロック」というワードが頭をよぎった。
彼女の曲からはsyrup16gと同じ匂いを感じる。
暗くて辛いのにいつまでも聴いていたくなるあの感覚だ。
恐ろしいまでの才能
「THE END」を聴いていると、現役アイドルとして活動している女性の1stアルバムというのが信じられない。
全曲作詞作曲というだけでも単純に凄いのに楽曲の完成度の高さが尋常ではないのだ。
もちろんそう感じるのは亀田による卓越したアレンジのおかげもあるだろう。
しかし非凡なメロディセンスは驚異的だと思う。
良い意味で初々しさがなく貫録さえ漂っている。
BiSHでも一部の楽曲で作曲していることや、BiSH加入以前にソロシンガーとして自作曲を発表していたことも調べて知っていたが、それでもやはり凄いと思う。
それまでの経歴がどうであれ、初めて世に放つ1stアルバムの出来がこれほどの物とは恐れ入る。
尤も、処女作が名盤になることは珍しくもない。
しかし、現時点で感じられるポテンシャルの高さを鑑みれば、次作はさらにとんでもない作品が出来上がると思う。
アイナ・ジ・エンド「THE END」サウンド
全体的にピアノがフィーチャーされており、一部激しいロックナンバーも収録されているとはいえ、ポップスの範疇に収まるアルバムだと思う。
聴かせるスローナンバーが半数を占めるため、個人的にはもう少しロックな曲も聴いてみたかったが楽曲の幅自体は広いので満足度は高い。
さすが亀田誠治と思わせる、緻密に練られたサウンドがバランスよくパッケージされている。
さまざまなタイプの『アイナ・ジ・エンド』が楽しめるし、聴くたびに新たな発見があるサウンドのおかげで何度でもリピートできると思う。
ではここから気になった楽曲をいくつか簡単に紹介していこう。
2曲目「虹」
本作で一番のお気に入りがこれだ。
不穏なアルペジオが淡々と続くAメロからサビで一気にスパークするグランジのようなサウンドは、アイナのしゃがれた歌声と非常にマッチしていた。
間奏も含めCoccoのような退廃的な雰囲気が最高にカッコいい。
5曲目「ハロウ」
こちらも激しいサウンドが特徴のロックナンバーとなっている。
構成としては先程の「虹」に似ていて、サビ以外は抑えたサウンドになっているが、ハロウは様々な音が混然一体に鳴っている印象でポストロックの雰囲気が漂っている。同じく最高にカッコよかった。
8曲目「STEP by STEP」
打って変わって明るい雰囲気のポップロックナンバー。
シンプルなバッキングで構成された疾走感あるサウンドはライブで盛り上がりそう。
後半から登場するハンド・クラップと、終始ハイテンションで楽しそうに歌うアイナに顔がにんまりすることうけあい。
11曲目「サボテンガール」
先程の「STEP by STEP」を上回るポップで軽快なナンバー。
ピアノやキーボードがかなりフィーチャーされておりアップテンポな曲調と相まって高揚感が煽られる。
サウンドからおしゃれさが滲み出ているので、渋谷系とかシティポップが好きならかなり刺さる曲だと思う。
アイナ・ジ・エンド「THE END」まとめ
ということで、大絶賛してきたアイナ・ジ・エンドの1stソロアルバム「THE END」。
まず曲が圧倒的に良いので自信をもって勧められるし、彼女の変幻自在な歌声もきっと気に入ってもらえると思う。
アイドルという事で偏見を持っている方もいるとは思うが、騙されたと思って聴いてみてほしい。
それではまた。
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