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WHITE ASH(のび太)とB-DASHの既成概念を破壊した共通点

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WHITE ASH

出典:TSUTAYA

 

今回は、「CROWS」「insight」などの楽曲が話題となり、邦楽ロックファンの熱狂的な支持を集めたWHITE ASH(2016年解散)に関するお話。

 

  

先日いつものように新しい音楽ネタを求めネットをさまよっていたところ、たまたまこんなサイトを見つけた。

 

この「音楽文」というサイト、偶然発見するまで名前すら知らなかったのだが、かの有名な株式会社ロッキング・オン・ホールディングスが運営している。

 

 

かんたんに言えば、ライター/コラムニスト気取り(失礼)の素人を集めて、音楽に関するコラムを書いてもらうといった主旨の一般参加型サイトらしい。

 

とにかくクサすぎる文章のオンパレード。

 

自己陶酔型の文章を嫌う方なら、拒絶反応が起こること請け合いである。

 

尤も、当ブログも似たような物なので他人様のことが言える立場ではない。この辺りでやめておこう。

 

 

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WHITE ASHに関するコラム

そんな「音楽文」でWHITE ASHに関するこんなコラムを目にした。

上記のコラムは今回の記事に関係してくるので、お時間があればサラッとご参照下さいませ。

 

 

 

上記コラムの内容を簡潔に説明すると

NIRVANA好きのコラム主がWHITE ASHに出会い、その音楽の素晴らしさに感銘を受けファンになったものの、最終的には解散してしまって寂しい

 というような内容でWHITE ASHの音楽に惚れ込んだとある若者の物語である。

 

 

かくいう筆者も「WHITE ASH」は大ファンで、相当に思い入れのあるバンドなのだ。

 

過去にはこんな記事も書いている 


 

 

 

▼このアルバムはホントによく聴きました


THE DARK BLACK GROOVE [ WHITE ASH ]

 

 

思い入れがあるゆえに上記のコラムは素直に共感できる部分が多かった。

 

コラム主のWHITE ASHに対する愛情もしっかり伝わってきて良い文章だと思う。

 

 

ただ一か所だけコラムの内容で引っかかる場所があったのだ。

 

 

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WHITE ASHの歌詞

それは、文中でWHITE ASHの歌詞について言及されていた箇所。

 

 

少し長いけどそれぞれ抜き出して引用させていただきます。 

 

出典:グランジの残像 – NirvanaからWHITE ASHへ (西村ヨウ)

奇妙なツイートに導かれた僕を次に待っていたのは、意味のない言葉の羅列だった。WHITE ASHの楽曲はどれも、一聴しただけでは何を言っているのか聴き取れない。

 

つまり、WHITE ASHの楽曲において歌詞という概念自体がなく、いわば一つの楽器として歌を使っているということだ。支離滅裂な言葉は聴き取れなくて当然だった。80年代以降の洋楽と邦楽をバランスよく組み合わせたようなバンドサウンドと、歌詞ではない歌詞。この狙いすましたアンバランスさは、「歌詞が大事」と言われる音楽への反抗だった。

 

「意味のない言葉」「聞き取れない歌詞」に合点がいった僕は、彼らが歌詞を破壊する姿から、反文化的な側面の“汚さ”を見出した。それは、Nirvanaグランジと括られるほどに身をていして表現したものとは異なる。オルタナティヴロックやポストロックという、広い場所に隠れた凶暴な“汚さ”だ。

 

歌詞による制限がないWHITE ASHの楽曲は、新しくも僕が求めていたものだった。「なんかわかんないけどかっこいい」は、当時の僕が言いたくてたまらなかったセリフそのものだった。

 

ここに書かれているように「WHITE ASH」の歌詞は非常に特殊なやり方で書かれている。

 

これはファン以外にはあまり知られていないことだ。

 

 

基本的に文法が滅茶苦茶で意味としては通じない文章ばかりなのだ。(活動後期は意味のある歌詞も数多く手掛けていたが)

 

 

たとえば「Number Ninty Nine」の歌詞

Number Ninety Nine

Number Ninety Nine

  • WHITE ASH
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

▼16秒辺りの歌詞に注目

a fed i load if used to we`ve on to 終わらせな
i roll it pin amp wimp 音符鳴らそう

 

それぞれの単語に意味はあったとしても、文法としては成り立っていないのがわかるだろう。

 

「pin amp wimp」なんかは完全に意味が分からない。

 

だが音として聴くとこれが滅茶苦茶カッコいいのだから不思議。

 

 

つまり、歌詞の意味などはどうでもよくて、その言葉が持つ"響き"とか"語呂の良さ"だけを大切にしているというか。

 

発する言葉(歌詞)をギターのような"楽器の音"と同じように捉え、あくまで"音"として扱っているというわけ。

 

 

 

日本語を英語のように錯覚(錯聴)させるバンドは結構いるけど、WHITE ASHのような音楽性は珍しい存在だ。

 

 

コラム主は、そういった歌詞に対する「のび太(Vo/G)」の考え方であったり、実際に楽曲の中に存在した「意味のない言葉」「聴き取れない歌詞」に衝撃を受けたということ。

 

そして、WHITE ASHが業界にはびこる「歌詞至上主義」の概念を打ち破った、いわば"オリジネイター"であるかのように言及している。

 

この部分に私はどうしても引っかかってしまった。

 

 

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歌詞という概念自体が存在しないバンド 

「歌詞至上主義」の概念を打ち破った、言葉を本来の意味で使用しない特殊なロックバンド「WHITE ASH」。

 

「歌詞の大切さ」を声高に叫ぶ昨今、そんなロックバンドが目の前にいたら多感なロック少年は食いつくだろう。

 

 

だが「歌詞の概念を打ち破る」という発想は、WHITE ASHが発表する前から実施しているバンドがいた。

 

この方法論でかつて音楽界を席巻していたロックバンドが実は存在していたのである。

 

 

適当アドリブめちゃくちゃ語

そのバンドとは2017年に解散したB-DASH


Let's Collabo [ B-DASH ]

 

B-DASHは、若年層には馴染みが薄いかもしれないが、90年代後半からのインディーズブームを牽引し、数々のヒット曲を世に放ったミクスチャーバンド。

 

一般的にはメロコアのイメージが強いバンドだが、ボーカルGONGONの音楽的嗜好に起因する楽曲の幅や、内包する音楽性の広さから考えてミクスチャーと言っても差し支えないだろう。

 

 

そんな「B-DASH」だが「WHITE ASH」同様、文法的に意味の通らない歌詞で楽曲を制作していたのだ。

 

それが「適当アドリブめちゃくちゃ語」という方法。

 

「何言ってるかわからんけどカッコいい」の元祖はB-DASHではないだろうか。

 

 

▼たとえば「ちょ」という曲。

B-DASHの中では圧倒的な代表曲と言える。

 

 

出来上がった楽曲に「ちょ」というタイトルを付けるのも頭がおかしい(褒め言葉)が、この曲が収録されたアルバムは「ぽ」である。

さらに斜め上を行く天才的発想。

 

 

ではここで「ちょ」の印象的な歌詞を見てみよう。

 

「ちょ」の歌詞はいろいろな意味で印象に残るのだが特に以下の部分のインパクトは凄い。

▼上記映像の28秒辺りから

立派な拳法界 正方位

あなたがこの歌詞を見てどう思うかは自由だが、筆者はこの素晴らしさにもう言葉はいらないと思っている。

 

 

いずれにせよ、常人では到底辿り着くことの出来ない孤高のセンスで楽曲を制作していたB-DASH

 

メディアでのインタビューでGONGON(Vo/G)は

「言葉という概念を捨て、音として聴いてほしい」

出典:B-DASH - Wikipedia

と語っている。

 

 

こうしたGONGONのスタンスは、WHITE ASH(のび太)が提唱していた歌詞に対する考え方と根本は一緒だと思う。

 

 

 

B-DASHは、音楽性もそうだが、元々パンク精神を持ったバンドだった。

 

パンクと言えば「反逆」の音楽だ。

 

当時勢いのあったJ-POPやラブソングに反抗し、「歌詞なんてくだらない」という考え方に至ったのかもしれない。 

 

でなければ、GONGONが単なる変人だっただけかもしれないが。

 

 

いずれにせよ、B-DASHは独特な感性で音楽を生み出し、カッコいい音を鳴らしていたのは間違いない。

 

 

ここまで読み進めてきた方は薄々感づいているだろうが、実はB-DASHも大が付くほどのファンである。

 

B-DASHについてなら一晩中話せる自信があるし、好きだという人がいればすぐにでもお近づきになりたい。

 

そのため、WHITE ASHが頭角を現し始めたとき、「B-DASHみたいなバンドが出てきた!」と興奮したものだ。

 

 

B-DASHは一時期は「いしわたり淳治」など、外部の作家を起用し意味のある歌詞を書いていた時代もある。

 

だが、活動後期も「適当アドリブめちゃくちゃ語」を打ち出していたし、コンセプトに関しては基本的に一貫していたと思う。ファンや音楽仲間もそういった認識だったはずだ。

 

 

余談だが、B-DASHはよくトンガリキッズというユニットと間違えられていた。

上記の「B-DASH」という曲が存在していたため「とんがりキッズのB-DASH」なのか「B-DASHのとんがりキッズ」なのかリスナーは混同してしまったのだ。

 

ちなみにB-DASHの解散ニュースが発表された時も、一部界隈ではトンガリキッズが解散したと思われていた(笑)

 

 

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のび太がWHITE ASHで残したもの

B-DASH1997年から活動してるので、2006年から活動を始めたWHITE ASHよりも9年も前に歌詞の概念を破壊していたことになる。

 

ただ勘違いしないでほしい。

 

「WHITE ASH」ではなく「B-DASH」が意味のない歌詞のオリジネイターだから「WHITE ASHはダメだ」と言っているわけではない。

 

そもそも、邦楽ロックで初めて歌詞の概念を破壊した”真のオリジネイター"が誰なのかは筆者にも分からない。

 

 

筆者が言いたいのは、こうした既成概念を破壊しようとするロックの魂はいつの時代にも存在していたということを分かってほしいだけである。

 

 

グランジの残像 – NirvanaからWHITE ASHへ (西村ヨウ)

たとえば、このコラムを読んだ今をときめく若者が「WHITE ASHの考え方はロックでカッコいい!」と思ってくれるのはもちろんうれしい。

 

でも偉大な先人がいたことも知っておいてほしいのだ。

 

「WHITE ASH」は 「B-DASH」チルドレンだと勝手に思っている。

 

 

 

たかが音楽だし「目の前にある音だけ聴いてりゃいいじゃん」という考え方も間違ってはいない。

 

だが、辿ってきた歴史を知ることで、今聴いている音楽にさらなる深みが加わることもある。

 

大きなお世話かもしれないが、少なくとも筆者はそうやって音楽を聴くことでさらに音楽が好きになった。

 

 

のび太がWHITE ASHで残した楽曲たちは、未来の音楽界に必ず良い影響を及ぼすだろう。

 

歴史はめぐる。

 

そう遠くない未来、歌詞の概念を破壊した素晴らしいバンドが登場するはずだ。

 

その日を楽しみに待とうじゃないか。

 

それではまた。

 

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