【レビュー】そこに鳴る「ゼロ」 4th Mini Album 切れ味鋭い名盤
今回はそこに鳴るの「ゼロ」(2018年5月9日発売)というミニアルバムを紹介したい。
そこに鳴るについては以前のエントリーで熱く語っているのでぜひご覧ください。
とにかく最近「そこに鳴る」が気になって仕方がないのだが、この「ゼロ」というミニアルバム相当にヤバい。相変わらずギター弾きまくりのやかましい音楽を聴かせてくれている。
うるさい音楽自体は、ラウドロック全盛の現在の音楽シーンでは珍しくも何ともないのだが、そこに鳴るのやかましさはどこか狂気を孕んでいる。
音楽という物は、ある特定のジャンルがブームになると、影響を受けまくったフォロワーが激増、その後は形骸化された音が溢れ一気に飽和状態となる。
飽和してしまったジャンルは目も当てられない程つまらない音楽になっていく。近年の「取ってつけたかのよう」な、メタルコアを想像してもらえば分かりやすいだろう。
どのバンドも同じような音で同じようなプレイをして、同じような曲構成で同じようなアレンジ。本当につまらない。
それは邦楽ロック全体にも言える。同じようなロジックのバンドばかりが並び、はっきり言って面白味に欠ける(もちろん変態バンドも数多く存在しているが)。そんな状況の中、そこに鳴るはまたまたやってくれた。
現在の邦ロック界では唯一無二かもしれないと思わせる驚異の楽曲たちで、退屈だった私の心を躍らせることに成功。(上から目線)
前置きが長すぎた。それでは、そこに鳴る「ゼロ」のレビューにいってみよう。
そこに鳴る「ゼロ」全曲レビュー
そこに鳴る「ゼロ」収録曲『掌で踊る』
アルバムの幕開けを飾るにふさわしい、そこに鳴る流の王道ロックナンバー。
Youtubeでの再生回数は270万回再生とそこに鳴るの中ではかなりの人気曲。
ゼロというミニアルバムはサウンドの原点を目指したという事もあり、良くも悪くもいつものそこに鳴る。だが、そのサウンドにはこれまでのそこに鳴るが驚異的な密度で詰め込まれている。
現時点でのそこに鳴るのすべてが詰まっていると言っていいだろう。
ギター弾きまくりなのは相変わらずで、鈴木重厚のテクニックすべてが堪能できるナンバー。予測不能なアレンジや随所に挿入されたアルペジオのおかげで、うまく緩急がつけられている。
サビのキャッチーさはそこに鳴るの楽曲の中でもトップクラス。これはシンプルにいい曲です。
そこに鳴る「ゼロ」収録曲『Less Than Zero』
これぞマスロックという変態ナンバー。
イントロ、アウトロがとにかく圧巻でギターもベース馬鹿みたいに弾きまくりのためアドレナリンが噴出すること間違いなし。
イントロだけでご飯三杯はいけちゃう。
メロディが比較的穏やかだがサビ以外プレイが忙しいのでピロピロ率は高め。
そこに鳴る「ゼロ」収録曲『表裏一体』
大胆にピアノやストリングスをフィーチャーした新機軸のナンバー。
前半はギターアレンジもメロディに寄り添うような感じで、いつもの狂気さはそこまで感じられない。とにかくメロディの良さが際立って聴こえる。
曲の後半は切り裂くようなギターで幕を開け、ここからお得意の展開になるかと思いきや所々で顔を見せるストリングスの音色で最後まで比較的柔らかい印象が残った。
そこに鳴る「ゼロ」収録曲『self connection』
マスロック全開なイントロで始まるが曲中は比較的超絶プレイ控えめ。
特にサビで顕著だがピロピロがほとんど聴けないので少し寂しいが、サビのメロディ自体はめちゃくちゃキャッチー。
メロディだけ抜き出したらめちゃくちゃ良い曲です。
ギターソロが哀愁を帯びた泣きメロで胸キュンもの。
全体のアレンジはかなり難解なので何度聴いても飽きない。聴くたびに発見がある。
そこに鳴る「ゼロ」収録曲『physical destrudo』
イントロのギターカッティングが印象的なナンバー。
間奏の変態アレンジを除けば、下手したらただのギターロックになってしまいそうな分かりやすいアレンジになっている。
とはいえAメロの一部で何を弾いているのか分からない恒例の変態プレイも聴くことが出来るのでやっぱりいつものそこに鳴るサウンドかな。
そこに鳴る「ゼロ」収録曲『indelible time』
イントロの同期サウンドが幻想的で「これがそこに鳴るの楽曲なのか」と一瞬驚かされる(曲の後半でも同期がフィーチャーされる)。
三曲目の「表裏一体」同様にピアノとストリングが楽曲に彩りを加えており、サビでは神々しささえ感じられる。
この曲もメロディアスなギターソロが印象的。正直この曲のギターソロはもう少し長く聴いていたかった。
そこに鳴る「ゼロ」全曲レビューのまとめ
そこに鳴るに関してはどうしてもギターに意識が集中しがちなので、こんな感じのレビューになってしまうけどベースもドラムもやっていることは結構ヤバめです。
次のアルバムレビューではその辺りも気を付けて書いてみようかなと思ってます。
さて今回の「ゼロ」というアルバムですが、全体を通して強く感じたのは非常にメロディアスだということ。
演奏うんぬんは置いといても歌モノとしてもあらゆるロックリスナーに向けて十分訴求できる内容だったんじゃないかなと。
何だかんだ日本のロックリスナーってゴリゴリのジャンルが好きでも結局キャッチーなメロディ好きですからね。ライブで一緒に歌いたい人が多いと思いますし。
そういった意味でそこに鳴るのゼロはいろいろなリスナーに自信を持っておすすめできる名盤と言えます。
マスロックとかプログレっぽいサウンド自体がキッズには馴染みの薄いジャンルかもしれないけれど、そこに鳴るはその中でもキャッチーな部類に入ると思いますので、まだあまり知らないよって方はこの機会に掘り下げていただけたら幸いです。
それではまた。
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