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【ナッシングス】Futures(セルフカバー) 原曲と比較しながらレビュー 【Nothing’s Carved In Stone】

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2020年8月26日Nothing’s Carved In Stone(ナッシングスカーブドインストーン)のセルフカバーアルバム「Futures」がリリースされた。高い演奏力を誇る彼らの代表曲を最新型サウンドでアップデートした初のセルフカバー盤である。

 

各メディアで絶賛されている「Futures」だが、結論から言うと、原曲の方が勝っているトラックがいくつかある。所詮個人の感覚でしかないけれど、私の率直な感想はそんなところ。

 

セルフカバーというのは、原曲への思い入れが強いほど、それを超えることが難しくなるのだが、本作でもそれが当てはまる形になった。記事の後半では原曲との比較も交え、それぞれの曲を簡単にレビューしていこう。

 

※まだ二回りほどしか聴けていないので、今後評価が変わる可能性もあります。

 

 

 

収録内容

 

DISC 1 ※通常盤、初回限定盤共通

01. NEW HORIZON
02. Isolation
03. Spirit Inspiration
04. November 15th
05. Red Light
06. Rendaman
07. 白昼
08. Out of Control
09. Like a Shooting Star
10. きらめきの花

DISC 2 ※通常盤、初回限定盤共通

01. Dream in the Dark
02. YOUTH City
03. In Future
04. Brotherhood
05. Midnight Train
06. Around the Clock
07. Milestone
08. Pride
09. ツバメクリムゾン
10. BLUE SHADOW

 

Nothing’s Carved In Stone「Futures」全体の感想

 

一聴しただけで、ボーカルもサウンドも原曲と別物だと感じる曲が多いのだが、その点については賛否両論が巻き起こりそうだ。それくらいリスナーによって評価が二分しそうな作風である。アレンジ自体は原曲とほとんど変わらないが、とにかく質感が大きく変化した

 

どのトラックもそうだが、まず気が付くのはボーカルの大きな変化ではないだろうか。表現力が飛躍的に向上しており、原曲よりもしなやかさが増している。英語の発音が滑らかになっていたり、ひとつひとつの言葉に感情を込めて伝えようとしているのがひしひしと感じられた。結果的に、ただメロディをなぞって歌っているだけではなく、曲が持つ物語性も原曲を超えて上手く表現できている。ただ、原曲との違いを意識しすぎている気もしたので、人によっては少しわざとらしく感じるかもしれない。

 

ボーカルの厚みが増している点も一聴してわかりやすい。随所でエフェクトが効果的に使われていたり、声が重なって聴こえたりして(おそらくダブルトラック?)、平面的だった原曲のボーカルが重厚な立体感を得た。

 

次にサウンドだが、輪郭がくっきりしたので、原曲と比較するとそれぞれの音をよりリアルに感じられた。以前が「創られた音」だとすると、今回のサウンドは文字通り「生の音」に近い。エフェクトに関しては原曲以上に加えている場合もあるが、不思議と生々しく感じられた。

 

 

インタビューで村松拓が語っていたが、音のバランスを意識して変えたようだ。前に出る音と、後ろに引っ込む音が秒単位で目まぐるしく変化するので、曲の持つ立体感や躍動感は原曲の何倍にもなった。この変化は、ボーカルの立体感と相まって、すさまじい音の塊となり聴く者を圧倒する。アレンジはほぼ変わっていないと既述したが、曲によってはギターソロが全く別のフレーズに変わっており、セルフカバーという点を差し引いても新鮮な気持ちで聴くことができるだろう。

 

ここからが少しマイナスポイント。尖った印象のあった原曲から、何だかマイルドな音に変わった。マイルドと言えば聞こえはいいが、丸すぎるため「野暮ったい」と表現してもいい。良く言えば引っ掛かりがなく"聴きやすくなっている"のだが、ナッシングスの"尖った部分"が好きなリスナーにとっては、原曲の持つパンチ力が損なわれていると感じるかもしれない。ただし、このサウンドの変化がバッチリはまっている楽曲もあるので一概に悪いとは言えない。

 

 

「Futures」原曲との比較レビュー Disc1

01. NEW HORIZON

こちらは新曲なので原曲との比較はなし。アルバムの幕開けを飾る、スタジアムロックと呼んでも差し支えない壮大なスケールのエモーショナルナンバー。

 

02. Isolation

ナッシングスを象徴する完全無欠のキラーチューン。本作のサウンドの変化がばっちりハマった原曲に負けず劣らずの完成度。というわけでリテイク版の勝利。音が太くなってシンプルにカッコよくなった。表現力が増した上に、激しさも失われていないボーカルも見事。

 

もっとも特筆すべきはギターソロ。大きくフレーズが変化しているが、この変貌ぶりには鳥肌が抑えられなかった。

 

03. Spirit Inspiration

こちらもナッシングスのド定番でライブでは欠かせない曲。これは原曲の勝利サウンドがまろやかになりすぎていて、エッジが削がれてしまった。ボーカルも何だかやわらかい印象。決して悪くはないのだが洗練され過ぎている。やはりこの曲は原曲のような荒々しさが良く似合う。

 

04. November 15th

ナッシングスにとって誕生日的な意味合い持つ、ファン以上にメンバー自身が大切に思っているであろう曲。これは完全にリテイク側の勝利。重厚さや表現力を増したボーカルがそのまま楽曲の良さに繋がっている。「~overflowing♪」の部分が身悶えするほどエモーショナル。

 

もともと非の打ち所のない名曲だったが、それを軽く凌駕した最高のセルフカバーに仕上がっている。ナッシングスファンならこの曲のためだけにアルバム購入してもいいくらい。

 

05. Red Light

歌を聴かせるタイプのミディアムロックナンバー。これは原曲の勝利だろうか。曲の性質上、大きく変化させることは出来ないので、目立った違いはないが、やはりサウンドが丸すぎるためこの評価である。

 

06. Rendaman

もともと情報量過多な楽曲だが、リテイクでより緻密になった。正直どちらも好きなので甲乙つけがたい。ソリッドな原曲も良いし、よりダーティなサウンドのリテイク版もカッコいい。これは引き分けということで。

 

07. 白昼

キャッチー過ぎるサビメロが印象的なナンバー。一発で判定できたが原曲の勝利。これはボーカルのしなやかさが裏目に出すぎている。キャッチーながらも重厚で無骨だった原曲の良さがなくなってしまった。

 

08. Out of Control

ファン人気も高いナッシングス屈指の踊れるナンバー。これはリテイク側の勝利。ボーカルとサウンドに厚みが増したことで良い方向に転がった。単純に音が太くなったので聴きなれたはずのリフでもすさまじい破壊力である。ブレイクの箇所なんて音にボコスカ殴られているようだ。

 

原曲の持つ軽やかな浮遊感が多少薄れているが、正直ボーカルが薄っぺらい印象だったので、これくらいゴツい方がカッコいい。

 

09. Like a Shooting Star

どうでもいい情報だが筆者の思い入れが特に強い楽曲である。問答無用でリテイク側の勝利。これは最高。ギターの隙間を埋めるアレンジなど、比較的ベースの目立つ曲だが、サウンドの変化でグルーヴがより際立つ結果となった。原曲以上にひなっちのブリブリ感が味わえるとは何たる幸せ。

 

4年前の楽曲なので、歌いまわしにそれほど違いはないが、サビでボーカルを重ねたことで、異次元の世界に足を踏み入れてしまったような、日常とはまったく別の景色が目の前に広がった。ちょっとしたスパイスを加えただけで、ガラッと世界が変わる。いずれにせよ見事なセンスである。

 

全体的なサウンドは申し分ないが、ボーカルの変化がなければ、ここまで評価していなかったかもしれない。

 

10. きらめきの花

個人的な感想だが、ライブで演奏が始まるとハッピーな気持ちになる曲。原曲の勝利。これも「白昼」同様ボーカルの"軽さ"が気になってしまった。歌唱力は格段に上がっているものの、ナヨナヨ感が勝っている。声を張り上げた箇所でも、綺麗にメロディに乗れているのだが、多少下手でも良いので原曲のような無骨な男らしさが欲しかった。

 

 

「Futures」原曲との比較レビュー Disc2

01. Dream in the Dark

新曲のため原曲との比較はなし。様々なレビューで言及されているので今更だが、ギターリフがとにかく個性的なナンバー。まるで電子音のような音色で細やかなフレーズを奏でる生形真一はやはりセンスの塊だ。直接的な表現で綴られた歌詞は、一聴するとあったかい気持ちにさせてくれるが、実は辛辣な内容である。

 

02. YOUTH City

Bメロとサビの"締めのメロディ"が同一(「You can't stop to scream out, again♪」の部分)というトリッキーな名曲。これって単純にすごい事だし、発明とまで思っているんだけど、ほとんどのレビュアーはここに言及していない。私が無知なだけでそこら中に転がっている手法なのだろうか??

 

まぁそれは置いておいて、原曲との比較だが、向こうが完成されすぎているため散々悩んだ末、僅差でリテイク版の勝利。もともとエモーショナルな楽曲だが、ボーカルの表現力が増したことで、特にハイトーンで歌い上げる部分のエモさに磨きが掛かった。歌の上手さが曲の良さに直結した好例。より荒々しくよりきめ細やかになったサウンドも聴きどころ。

 

03. In Future

ナッシングスの中では比較的ラウドなナンバー。部分的だがドラムのフレーズが変化しており、新鮮な気持ちで聴くことが出来たためリテイク版の勝利。細かく刻んだ跳ねたリズムが、グルーヴ感のある楽曲にダンサブルな要素を加えている。

 

04. Brotherhood

プレイは凝っているが、全体的に歌を聴かせるアレンジが施されたスケール感の大きいダンサブルナなナンバー。リテイク版の勝利。ボーカルの裏でなっている音がかなりクリアになったことで、音の粒がしっかり確認でき楽曲全体がよりカラフルに洗練された印象。

 

05. Midnight Train

これは誰もが驚いた意外な選曲ではないだろうか。ナッシングスのアートな面が炸裂した個性的なナンバー。ボーカルスキルの飛躍的な向上が、曲の雰囲気と完全にマッチしている。圧倒的にリテイク側の勝利

 

06. Around the Clock

さわやかな作風でファン人気の高いキラーチューン。リテイク版の勝利。原曲には、いい意味でも悪い意味でも"青臭さ"が感じられたが、最新型のナッシングスサウンドになって完全に生まれ変わっている。ここをどう感じるかで、この曲の評価は変わってくるのだが、個人的には「ブラッシュアップ」という言葉がぴったりハマる、これ以上ないナイスなセルフカバーである。

 

07. Milestone

人知を超えた驚異的な演奏スキルが、聴く者すべてを圧倒する人気のナンバー。ヒリヒリする研ぎ澄まされた原曲の雰囲気も好きだけれど、これはリテイク版の勝利か。楽曲の持つ緊張感という"器"はそのままに、中身だけグレードを上げた感じだろうか?

 

鬼気迫る演奏はさらに切れ味を増し、牙をむいてこちらに襲い掛かってくるようだ。楽器の音だけを意識して聴いていると、まさに狂気が具現化したかのような錯覚をおこす。張りつめた緊張感はすさまじいものがあるが、ボーカルがうまく中和してくれている。このバランスが見事で何度でも聴きたくなる。

 

08. Pride

アニメ「キングダム」のオープニングにもなったキャッチーナンバー。リテイク版の勝利。一聴した時は「何も変わってないんじゃないか???」と思ったが、その後すぐ原曲を聴き返してみたら音のバランスがかなり良くなっていて驚いた。でこぼこだった音が均等に整頓されて歌が自然と耳に入ってくる良質なミックスである。歌モノなのでこのリテイクは正解ではないだろうか。

 

09. ツバメクリムゾン

リリース時、あまりのキャッチーさに「ナッシングスも変わっちまったのか」と古参ファンがざわついたナンバー。これは原曲の勝利サウンドはリテイク版が断然良かったが、ボーカルがやわらかすぎる。この曲でも歌唱力の上達はめざましいけれど、やはりあの無骨な雰囲気はなくさないでほしい。

 

10. BLUE SHADOW

最後にこの曲を持ってくるとはえらく渋いチョイスである。シングル「Spirit Inspiration」のカップリングでオリジナルアルバム未収録というレアなナンバー。

 

イントロとアウトロのアレンジが異なっており、原曲と比較すると大きく印象が変わった。特にアウトロのアコギがなくなったのは筆者にとってはマイナス。あのアコギの音色が形容しがたい余韻を残し涙腺を刺激すると思うのだ。とはいえ、全体的なサウンドはリテイク側に軍配が上がる。といわけで引き分けとさせてください。

 

 

 

「Futures」比較レビューまとめ

ヘッドホンで楽曲を聴きながら記事を執筆したので、いつも以上に疲労がたまったが楽しんでいただけただろうか。

 

比較レビューという事でどちらに軍配が上がったのか集計してみた。 

 

リテイク:11

原曲:5

引き分け:2

というわけで、引き分けを原曲票に含めてもリテイク側の勝利に終わった。

 

個人的なリテイクMVPは「November 15th」次点で「Like a Shooting Star」

 

 

「Futures」を聴いて改めて思ったが、セルフカバーという形態は面白い。がっかりすることもあるが、それ以上に新しい感動を与えてくれる。他のバンド達もセルフカバーをどんどんリリースしてもらいたい。そう思う今日この頃。

 

それではまた。

 

 

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