【キズ】来夢はV系の既成概念を破壊した新たなロックヒーロー
筆者は最近キズというヴィジュアル系バンドにはまっている。
キズのおすすめ曲「天誅」
この「天誅」のイントロは、ブラジルの某パワーメタルバンドのようで非常に私好み。
「キズ」のメンバーは
Vo. 来夢(らいむ)
Gt. reiki
Ba. ユエ
Dr. きょうのすけ
の4人組。
音楽性はメタリックなリフを主体に、ゴリゴリしたサウンドが特徴。いわゆる「ビジュアル系メタルバンド」である。
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ボーカルはヴィジュアル系特有の癖が多少感じられるが個性的なハイトーンが魅力。ピッチも安定しており総合的な歌唱力は高い。
キズとの出会いは知人の勧めがきっかけなのだが、比較的好きなコンセプトだったためハマるまでそれほど時間はかからなかった。
そしてインタビューを読み漁ったりしながら、メンバーの人物像を知ることになるのだが、ボーカル「来夢」の独特なキャラクターにどんどん惹かれていった。
キズのボーカル「来夢」という男
出典:キズ 来夢 (@Kizu_LiME) | Twitter
キズでボーカルを担当している「来夢」という人物は元々「LEZARD」というバンドに在籍していた。
LEZARDはV系の中でも所謂「キラキラ系」にカテゴライズされていたバンド。
出典:BARKS
キラキラ系について筆者はそこまで詳しくないのだが、一般的なイメージとしては比較的ポップな曲調でライブでは独特な振付などをしているようなバンド(振り付け自体はV系の伝統文化ではあるが)。
キラキラ系というから凄まじくポップなイメージを持っていたが、実際LEZARDを聴いてみたら想像以上にヘヴィな曲をやっていて驚いた記憶がある。
中には”キラキラ”の名に恥じない、ポップネスが炸裂した楽曲もあるのだが、音楽的には幅が広いバンドだと感じた。
そんなキラキラ系だったLEZARDを来夢は脱退、その後、キズを結成することになる。
原因はいわゆる「方向性の違い」というやつだ。
LEZARDの"キラキラ系"としての活動に疑問を持ち始めた来夢は、自分の心に嘘をついてまで活動していくことを良しとせず、己のめざす音楽のために袂を分かつ。
彼のその想いは冒頭で紹介したMV「天誅」の歌詞に表れている。
(キズの作詞はすべて来夢によるものだそう)
キズの楽曲「天誅」に込めたボーカル来夢の想い
「天誅」で描かれている歌詞の世界は限りなく深い。
言葉自体は過激な表現が目立つのだが、そこには来夢の想いが込められている。
「なぜ自分がここにいてバンドをやっているのか」
という深い部分にまでフォーカスされていた。
「嘘だらけだった自らの過去」とあるように
"ヴィジュアル系"というビジネスモデルや、そのシステムそのものを徹底的に断罪。
そして、そんな嘘っぱちなモノに群がり続けているV系ファン(所謂バンギャ)に対しても、これでもかと攻撃的な言葉で痛烈に批判。
来夢が提示した歌詞の世界は私にとって衝撃だった。
カルチャーショックと言っても差し支えない。
過去さまざまなV系バンドを見てきたが「ヴィジュアル系」という「ジャンル」、もしくは「存在」そのものに嫌悪し、見切りをつけ脱ビジュアルするバンドは割と多かったと思う。
だが、ビジュアル系という同じシーンにいながら、ヴィジュアル系のあり方に嫌悪し、直接的に攻撃するというキズ(来夢)のようなスタンスのバンドは少なくとも私が見てきたバンドの中では存在しなかった。※筆者が知らないだけかもしれないが
そんなロックな佇まいに私は感銘を受けたのである。
来夢はロックな男
ビジュアル系という世界は特殊なコミュニティを形成しがちである。
通常の邦楽ロックとは比べ物にならないくらいファンも閉鎖的で村社会感がすごい。
まるで宗教的な連帯感とも言える。
そうした部分もひっくるめて「ヴィジュアル系は宗教臭い」と言われるのだろう。
ヴィジュアル系だけに限ったことではないが、特殊なコミュニティは時に好奇の目にさらされ、外野からは理解されにくいものである。
それはビジネスの観点でみても同様。外部の人間には理解しがたい部分が見受けられる。
「ビジュアル系」というのは特殊な価値観の元に成り立つ商売だ。バンドのメンバーに恋をすることでファンはお金を払う。アイドルのそれに比べても、ファンのアーティストへのハマり具合はエグいだろう。その様は明らかに異常である。もちろん当事者たちが良ければ、それはそれで問題ないのだが、単純に「現象」として捉えた場合、異常であることは間違いない。そうしたヴィジュアル系特有のビジネスモデルは、外野から見た場合、嫌悪の対象となるのだ。
少し前、来夢のインタビューを読んだのだが、
本人としてはビジュアル系に嫌悪感を抱いているわけではないものの、
「ビジュアル系というジャンルに対し疑問を持っている」
と語っていた。
天誅という楽曲で「ビジュアル系」の狂ったシステムに警鐘を鳴らした来夢はどんな想いで活動を続けていくのだろう。これからが本当に楽しみなバンドだ。
キズというビジュアル系バンドは、ロックが本来持つ「反体制」を体現した"ロックバンド"らしいロックバンドである。それは来夢が信念を貫き通す限り変わらないだろう。
キズ(来夢)の活動に期待
ビジュアル系シーンに限った話ではないけれど、ロックシーン全体でも飽和状態が続いており、なかなか新しいスターというのが生まれにくい状況である。
ビジュアル系シーンで近年のスターといえば誰になるのか。
パッと思いつかないけれど、"シーンを揺るがす"ようなバンドってしばらく出てきてはいない。
ぜひともキズにはそうしたバンドに成長していただいて、停滞したビジュアルシーンを引っ掻きまわして面白い世界を我々に見せてほしいと願っている。
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