【レビュー】hideトリビュートインパルス 聴いてみた感想 【hide TRIBUTE IMPULSE】
今回はhideの2018年6月リリースのトリビュートアルバム
「hide TRIBUTE IMPULSE(ヒデトリビュートインパルス)」をレビューしていきたい。
- IMPULSE hide TRIBUTEはどんなアルバム?
- IMPULSEに参加したアーティストとカバーした楽曲
- 01:ROCKET DIVE / Dragon Ash
- 02:ピンク スパイダー / MIYAVI
- 03:D.O.D.(DRINK OR DIE) / FLOW
- 04:GOOD BYE / Cocco
- 05:ever free / 西川貴教
- 06:DOUBT / HISASHI × YOW-ROW
- 07:ELECTRIC CUCUMBER / ACID ANDROID
- 08:EYES LOVE YOU / BREAKERZ
- 09:BACTERIA / SEXFRiEND
- 10:TELL ME / GRANRODEO
- 11:HURRY GO ROUND (hide vocal Take2) (20th Memorial Track)
- hide TRIBUTE IMPULSE のまとめ
「hide TRIBUTE IMPULSE」が発売されたことで、hideがなくなってもう20年経ったというのが一番驚きだったが、今回のトリビュートアルバムのメンツは個人的にはかなりツボを押さえている。その中でも、Dragon Ashの参加が何よりうれしかった。
亡くなったベースの馬場さんがhideファンだったことはロックファンには有名で、いつかhideのトリビュートに参加してくれないかなと思っていたが、ついにこの時が来たかといった感じ。
hideのトリビュートといえば過去に何枚も発表されている。中には謎の企画盤的な物もあったりして、個人的に満足できるものは少なかった。
結論から言えば、今回の「hide TRIBUTE IMPULSE」はトリビュート盤としても楽曲の完成度といった面でもクオリティの高い作品になっていると思う。
個人的にhideトリビュートで一番良かったのは、一発目にリリースされた「hide TRIBUTE SPIRITS」
今回のIMPULSEもSPIRITS並みにいいアルバムだと思います。
IMPULSE hide TRIBUTEはどんなアルバム?
参加アーティストが過去のトリビュートに比べてひと際豪華な気がする。それだけでこのアルバムの価値は高い。冒頭にも書いたが、私としてはDragon Ashが参加しているだけですでに満足だが。
「hide TRIBUTE IMPULSE」には、hideの未発表ボーカルテイクが収録されることも大きな話題になった。
hideのボーカルテイクなので、厳密には他アーティストのトリビュートではない。公式発表では映画公開に合わせて収録されたとのこと。正直映画のために宣伝で収録されたものだろう。だが、ファンとしてはhideの新しい歌声が聴けるだけでも感涙モノなので経緯は二の次である。
トリビュートしたアーティストはこんな感じ↓
IMPULSEに参加したアーティストとカバーした楽曲
・ROCKET DIVE / Dragon Ash
・ピンク スパイダー / MIYAVI
・D.O.D.(DRINK OR DIE) / FLOW
・GOOD BYE / Cocco
・ever free / 西川貴教
・DOUBT / HISASHI × YOW-ROW
・ELECTRIC CUCUMBER / ACID ANDROID
・EYES LOVE YOU / BREAKERZ
・BACTERIA / SEXFRiEND
・TELL ME / GRANRODEO
・HURRY GO ROUND (hide vocal Take2) (20th Memorial Track)
なかなかに個性的なメンツが揃った。
では各曲のレビューをしていこう。
※カバー曲の下に原曲も貼っておきましたのでぜひ聴き比べてみてください。
01:ROCKET DIVE / Dragon Ash
降谷建志のヴォーカルが最高にマッチした、ひたすらカッコいいカバーになっている。
もともとROCKET DIVE自体が名曲で、そこへkjの声が乗るのだからカッコ悪くなるはずがないけど。
ストレートなアレンジで感度聴いても飽きないカッコよさがある。
ほぼ原曲に忠実なアレンジで、ギターソロ以外は特に大きく弄っている部分はないと思う。ギターの音も原曲に近づけているしhideへのリスペクトが感じられた。
kjがあまりにもマッチしすぎているので、なんだかDragon Ashの曲のようにも感じられる。原曲にほぼ忠実にカバーしても滲み出てしまうバンドの個性。
余談だが、Dragon Ashは布袋寅泰のアルバム「ALL TIME SUPER GUEST」にてBOOWYの「Dreamin`」をカバーしているがこちらもほぼ原曲に忠実で素晴らしいカバーだった。
02:ピンク スパイダー / MIYAVI
原曲の、地を這うようなメインリフのイメージが無くなりMIYAVIの手によって完全に生まれ変わったピンクスパイダー。
歌を聴かせることに重点が置かれているため、原曲のヘヴィなイメージを想像すると多少肩透かしを食らうかもしれない。もちろんイメージの異なる楽曲に生まれ変わるのもトリビュートの良さではあるが。
hideファンの私としては、原曲に異常な思い入れがあるため、原曲の良さが消えてしまっていると感じるが、非常に個性的で面白いアレンジにはなっている。
ただ一点、残念なのは、MIYAVIお得意のスラップ奏法があまり聴かれなかったこと。サウンドとしてはもうひとひねり欲しかったところ。もっとMIYAVIの色を出しても良かったかなと思う。
03:D.O.D.(DRINK OR DIE) / FLOW
酒飲みの美学が炸裂した屈指の名曲「D.O.D.」のFLOW版。高速で刻むバッキングは基本的に原曲に忠実だが、随所でカラフルなギターの音色や電子音が挿入されていて、より賑やかな印象。
ヴォーカルkohshiが少しhideの真似をして歌っているのが微笑ましく、楽しんでカバーしていることが伝わってきて好感度爆上がり。
アニメバンドと揶揄されるFLOWだが、実はロックバンドとしてのポテンシャルは高い。高度なスキルを持つ正真正銘の骨太ロックバンドなのだ。この曲でもその能力が如何なく発揮されている。FLOW、私はいいバンドだと思います。
04:GOOD BYE / Cocco
原曲も泣けるがCoccoがさらに泣ける曲にしてしまった。
ひたすらCoccoの歌声が染み渡る。多くを語るのは野暮になる。
05:ever free / 西川貴教
パブリックイメージ通りの"西川貴教(TM Revolution)サウンド"になった「ever free」。
これは賛否両論あるかもしれないが筆者の好きな部類に入る。
サビ以外はテンポを落としているので、疾走感のある原曲ファンは気になるかもしれない。全体的なサンドはギターゴリゴリのベースブリブリで普通にカッコいいとは思う。
西川貴教の歌はいつもの西川節で特筆するような事もないのだが、相変わらず阿保ほど歌がうまい。この人は何を歌っても自分の曲にしてしまうパワーがあって、その点は素晴らしい才能。
06:DOUBT / HISASHI × YOW-ROW
HISASHI(GLAY)とYOW-ROW(GARI)による、hide流インダストリアルロックの名曲「DOUBT」。
原曲に比べギターの音が太くなり挿入される音数も増えているので、かなり重厚な印象に生まれ変わった。HISASHIの音楽的嗜好が炸裂したまさにHISASHIらしいサウンドではないだろうか。
YOW-ROWには大変申し訳ないが、個人的にこの曲と彼のヴォーカルはマッチしていないような気がした。一部のスクリームとサビでの迫力の無さが特に顕著で、曲が持つラウドな魅力が損なわれている。
07:ELECTRIC CUCUMBER / ACID ANDROID
yukihiro(L'Arc〜en〜Ciel)のソロプロジェクトACID ANDROIDによるzilch曲のカバー。
zilchというのはhideがレイ・マクヴェイ(セックス・ピストルズのサポートなど)、ポール・レイヴン(元キリング・ジョーク、元PRONG)らと結成した世界基準のバンド。マリリンマンソンとツアーを周る計画があったらしい。
yukihiroには申し訳ないが、私としては圧倒的に原曲のラウドなサウンドが好み。ACID ANDROIDの音楽性は嫌いではないが、この曲には強い思い入れがあるのでyukihiroのアレンジでは楽しめなかった。
08:EYES LOVE YOU / BREAKERZ
DAIGO率いるBREAKERZ hide1stシングルのカバー。
BREAKERZはコナンのタイアップ曲くらいしか耳にしたことはない。他のリスナーの評価は分からないが、個人的にあまり歌が上手いとは思っていなかった。変な癖もあるし。
で、今作の「EYES LOVE YOU」だが、DAIGOは意外にしっかり歌えるんだなと驚いた。
hideへのトリビュートだからなのかもしれないが、DAIGOの癖のあるヴォーカルは影を潜め、丁寧に言葉を伝えようという心意気が感じられた。DAIGOはなかなかいい声をしている。
もともとBREAKERZの楽曲は、意識して聴いたことがないので単純に比較できないが、DAIGOのボーカル同様サウンドの方も丁寧な仕上がり。
アレンジは概ね原曲に忠実で、間奏とアウトロでオリジナルのフレーズが入っている程度なので原曲ファンも安心して聴けます。
09:BACTERIA / SEXFRiEND
BiSHのアイナ・ジ・エンドが参加したユニット「SEXFRiEND」によるhide流インダストリアルロック「BACTERIA」のカバー。
個人的な話で申し訳ないのだが、こうしたロックのトリビュートにアイドルが参加することは未だに認められない頭の堅い人間だが、今回のカバーはなかなか面白い試みだと思う。アイドルの参加は認められないけど。
原曲のやかましいサウンドが、声とギターだけという超シンプルな音に生まれ変わっていて、ゾクゾクするほどリアルな臨場感が味わえた。原曲ファンは賛否が別れるだろうがこれはこれで全然アリだと思う。
ただ「BACTERIA」もhide曲の中でかなり思い入れが強いので、原曲のインダストリアルな雰囲気をさらに押し進めてゴリゴリでメタリックなアレンジをしてくれる男臭いバンドにカバーしてほしかったのも事実。
10:TELL ME / GRANRODEO
大人気アニソンユニットGRANRODEOによるhide屈指のポップナンバー「TELL ME」のカバー。
公式サイトのコメントにて、ギターのe-ZUKAが発言していたが、アレンジは原曲にかなり忠実。ただし音はかなり太くなっている。サウンドだけ聴けばかなりカッコいい仕上がり。演奏も丁寧で全体的に巧いしね。
問題はヴォーカルの方。KISHOWの声質というかボーカリゼイションに癖がありすぎてここは絶対に好き嫌いが別れる。決して下手なヴォーカリストではないけれど、この癖をどう捉えるかでこの曲は評価が割れそう。
11:HURRY GO ROUND (hide vocal Take2) (20th Memorial Track)
いよいよ大トリ。我らがhideの登場。
この曲に関してはアレンジがどうとか、hideのヴォーカルがどうとか、とりあえず横に置いておいて、hideの新しい音源が聴けたことに「ありがとう」と言いたい。
hideの唄とPATAのギター最高です。
hideの歌声とPATAのギターだけというシンプルな構成。余計な装飾が無い分、楽曲の持つ力強さ、儚さがより一層際立って胸の奥の方をギュ~と掴まれるような何とも言えない感覚に陥いる。これは泣ける。
hideの粗削りながらも芯のある歌声と、PATAの人となりが伝わってくる優しいギターの音色。どちらも最高なのだが、ふと我に返って改めて楽曲を聴いてみると、急造でこしらえた感があり、楽曲としてのクオリティは決して高くない。
それを言ってしまっては身も蓋もないのだが、ボイスレコーダーで録音したようなhideのリアルすぎる歌声がすべてのモヤモヤを吹き飛ばしてくれるので結局プラマイゼロってことで。
hide TRIBUTE IMPULSE のまとめ
楽曲の完成度やバランスなど、満足度の高い良質なトリビュート盤ではないだろうか。
トリビュート盤の良いところは、新しく生まれ変わった楽曲を楽しむこと以外に、原曲の良さを再確認できるところだ。
今回でいえばhideの持つ普遍的なポップセンスやアレンジの先進性などが再確認できた。今聴いても十分に通用する楽曲を20年も前に生み出していたhide。
"天才"という言葉はあまり使いたくはないが、hideはやはり天才と形容して差し支えないと思う。音楽をやるために生まれてきた天才。だからこそ、亡くなって長い時間が経過しても、hideの残した楽曲たちは多くの人に感動を与えることが出来る。
hideの未発表ボーカルということで「HURRY GO ROUND」を聴くためだけにhide TRIBUTE IMPULSEを購入する熱烈なhideファンの方がひょっとしたらいるかもしれない。それは個人の自由なのでとやかく言うつもりはないが、hide以外のアーティストも本当にどれも素晴らしい楽曲ばかり。どのアーティストもhideへの愛情にあふれている。
hideラヴなあなたも原曲と聴き比べてぜひ楽しんでいただけたらと思います。