バンドTシャツ "にわか"が着ることは悪なのか?
2020年現在、バンドTシャツがブームになっていることはご存じだろうか?
筆者は以前アパレル業界で従事していたのだが、業界を離れ数年が経ち以前ほどファッションに興味がなくなった。そのため近年の流行に疎いのだが、バンドTシャツに関しても然りである。もちろんユニクロなどで手軽にバンTが入手できることは知っていたがここまで爆発的に流行しているとは思っていなかった。
いつごろからバンドTシャツが流行り始めたのかわからないが、ネットで検索してみたところ、2015年頃からテレビでも特集が組まれ大流行の兆しがあったようだ(未確定情報なので鵜呑みにしちゃダメ)。一部の人間からは「ロックTシャツ」 なんて呼ばれているらしい。
長年「バンドTシャツ(バンT)」と呼んでいた筆者にとって、"ロックTシャツ"という呼び名自体とてつもなく違和感があるが、まぁ今回そこは置いておく。
要するに「バンドTシャツ」という物が、広くファッションアイテムのひとつになってしまったという事だ。
もちろんブームになる以前から、バンドTシャツを普段着として着ていた人もいるだろう。私は気味が悪いメタル好きなので、当然ここに当てはまる人間である。
なぜバンドTシャツを着るのか?
筆者は10代半ばでパンクに出会い、ほどなくしてメタルに衝撃を受け現在にいたるのだが、多感な時期に出会ったこともあり生き方やファッション含めあらゆる面で影響されまくった。
その頃は、コアなメタル好きしか知らないようなバンドのTシャツを好んで着ていた時期もある。しかもとびきりグロいイラスト入りだ。それは自己主張に他ならないと思う。
「俺はお前らとは違うんだよ」
ということを周囲に発信していたのだ。
正確には普段聴いている音楽を主張したかったのだが、赤の他人に直接音を聴かせるわけにはいかない。だから着ている服を通して主張していたというのが正しい。
流行する前からバンドTシャツを着ていた人種はこういった考えが多いように思う。
私のまわりのキモいメタラー(褒め言葉)も同じような感じだった。
「お前らとは違う」とまでは思っていないにしろ、自己の嗜好を主張するために着るという面は少なからずあったはずだ。
筆者のケースなどは、今になって考えれば完全に若気の至りである。
いわゆる「中二病/厨ニ病」以外何ものでもない。
その反動かどうかわからないが、現在もバンドTシャツを着る一方では、無地を着る頻度もかなり増えた。
好きな音楽を周りに主張して何になるという考えも芽生えてきたし、自分がカッコいいから聴いているだけで、それ以外の要素はどうでもいいと思えるようになった。我ながらずいぶん丸くなったと思う。
バンドTシャツを着ることは自己顕示なのか?
毎度おなじみYahoo知恵袋である。
「バンドTシャツ」について少し検索するだけでこういった質問がわんさか出てきた。
先述したようにバンドTシャツを着ることは、そのバンドのことが好きだと主張することに他ならない。
だが中にはこんな回答もあった。
出典:Yahoo知恵袋
極めてライトな感覚でバンTと接する人種である。
これこそがバンドTシャツを取り巻く現状なのではないだろうか。
余談ではあるが、そもそもファッション自体が自己顕示欲のためだ。
引用してしまって申し訳ないが、上の回答者の場合でもそれは当てはまる。
禅問答のようだが「自己顕示のためではない」という「自己顕示」をしている。
生きている以上は無意識であっても、結果的になにかしら自己顕示しているのが人間ではないだろうか。
話を戻そう。
そもそもバンドTシャツを普段から着ているような人間は、一昔前なら変人ばかりだったはずだ。いい歳した大人が「CANNIBAL CORPSE」のTシャツを着ていたらどう思われるだろう?まともな人間なら後ろ指を指すにちがいない。
もちろん流行する前から"お気に入りの洋服"のひとつとして、バンTを着こなしていたファッショニスタもいただろう。だがゴリゴリのファッション好きもバンT好きと同様に元来「変人」が多い。
しかし現在は、流行のファッションアイテムになっているため、バンドTシャツが変人御用達アイテムではなくなってしまった。
単純に服として好きだからバンドTシャツを着ている
多くの人はこういった考え方に傾いているはずである。
訳のわからないメタルバンドのTシャツがここに含まれるか定かではないが、2020年現在では「バンドTシャツ」が間違いなく「おしゃれアイテム」としての地位を獲得しているのだ。
そうなるとどんな問題が起こるのか?
バンドのことを知らずにデザインのみでバンドTシャツを着る「にわか」が数多く生まれる。それに付随した「にわか」vs「バンT愛好家」の対立である。
※もっとも「にわか」側はハナから眼中にないだろうが
バンドTシャツを"にわか"が着るのは悪なのか?
バンT愛好家の筆者から率直な意見を言わせてもらうと、流行っているという理由だけで「にわか」共がバンドTシャツを着ることは許しがたいことである。
ただ、ファストファッションブランドをはじめ、誰でも気軽にバンTを購入できる現状であるため今の流行は致し方ないとも思う。
一般的な学生やOLは、流行を追い続けなければ、それこそ人間として扱ってもらえないこともある。これは時代関係なく若者が逃れられない宿命だ。
だから、バンTが『流行のアイテム』に選ばれてしまったことを、我々愛好家は不運に思うしかないのかもしれない。爆発的に流行したものを個人の力でどうにかするなんてことは不可能に近い。
しかし、頭ではわかっていても、簡単に認めるわけにはいかないのだ。
というか、もう好き嫌いの話である。
私はファッションにこだわりのない人間が嫌いだ。
だが「流行を追う人間=こだわりが無い」とは思っていない。
それに「流行」は必ずしも悪ではない。
余談だが、音楽にせよファッションにせよ「流行っているからダメ」という考え方は一番やってはいけないことだ。それをしてしまうと本物を見逃す恐れがある。
また、流行りに流されまいとする考え方が、すでに流行に振り回されていると気付いていない人は多い。
話を戻そう。
たとえば「流行のアイテムを何がなんでも絶対に取り入れる!」という強い信念があれば、それは最早"こだわり"と呼んでもいい。
だがおそらくそんなことを考えてバンTを着ているスイーツ女子がどれだけいるだろう。その多くはSNS映えや周りの目を気にしているに過ぎないのではないだろうか。
『私は「いいね」とかいらない。人からどう思われたって良い。流行っているバンTが着れればそれだけで満足!』
そんな想いで流行に向き合っているなら、それはむしろカッコいいとさえ思うが、実際はそうではないはずだ。だからこそ「にわか」はバンT好きから目の敵にされているのだと思う。
結論
にわかがバンTを着ることは現状では悪である。
流行や文化ということを考慮しても、やはり認めるわけにはいかない。
長年「バンドTシャツ」という物に愛情を注いできた人間としては、早くこの流行が終ってほしいと願うばかりだ。
流行が去ってしまえば、バンTは再びダサいアイテムに逆戻りするのだろうが、もともと変人が愛用するダサいアイテムだから何も問題はない。むしろ今の持ち上げられ方が異常で気味が悪い。
それにしてもこれだけ流行っているのに、Tシャツにプリントされたバンド名が読めない人間が大勢いるようだ。せめて自分が持っているバンTのバンドは名前くらい知っていて欲しいし、一度くらいは聴いてくれよと思う。
それではまた。
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