【レビュー】MASS OF THE FERMENTING DREGS「No New World」の感想 名盤【マスドレ】
MASS OF THE FERMENTING DREGS(マスドレ)というバンドをご存知でしょうか?
2018年7月現在のメンバー
・宮本菜津子 ベース、ボーカル
・小倉直也 ギター、コーラス
・吉野 功 ドラム、コーラス
上記3名からなるオルタナティブロックバンド。
2008年1stアルバム「MASS OF THE FERMENTING DREGS」をリリース。
計三枚のアルバムを発表し2012年に活動休止。
その後メンバーチェンジを経て2015年活動再開しました。
マスドレの音楽性は基本オルタナサウンドで、脱退したメンバーが田渕ひさ子ファンを公言していたこともあり、ナンバーガールを彷彿とさせるまさに"オルタナ"と呼べるもので当時はかなり尖った印象がありました。
ナンバーガールっぽいとはいっても猿真似の完全なるフォロワーというわけもはなく、ナンバーガールに影響を受けた部分を隠さず、それを自分たちのフィルターを通してうまく表現していた、みたいな感じかな。
現在もオルタナ路線を貫いていますが、自分たちだけの音楽をより深く追求しています。その結果、型にはまらない独特の世界観を作り上げました。
マスドレは女性ボーカルなのですがいい意味で"女らしさ"が感じられません。
ボーカル 宮本菜津子の声質や独特の歌詞のおかげもあるのか、甘さがないというか非常に男前なイメージ。
他のロックリスナーがどう思っているかわからないけど、私はロックにかわいらしさを求めていないのでマスドレの佇まいは大歓迎です。
でも今は、かわいい顔したポップなガールズバンドや、ゴリゴリのロックをかますアイドルがもてはやされる時代。
マスドレはボーカルの顔含め音楽的も一般的なウケは悪いかもしれません。
悲しいかな現状でブレイクすることはあまり期待できませんが、邦楽ロックファンなら必ず琴線に触れると思います。ぜひ聴いていただきたいです。
というわけで今回はMASS OF THE FERMENTING DREGS(マスドレ)の2018年7月4日にリリースされた4thアルバム「No New World」の全曲レビューをしていきます。
MASS OF THE FERMENTING DREGS「No New World」レビュー
1. New Order
オープニングを飾る軽快なポップナンバー。これまでのマスドレに比べ圧倒的に歌に比重が置かれておりメロディが際立つようになった。二回りくらいポップさに磨きがかかっている。この曲を聴いてマスドレは完全に次のステージに進んだと確信しました。
2. あさひなぐ
伸びやかなボーカルがさわやかで心地よいストレートなロックナンバー。他の曲もそうだけどマスドレのギターの音作りはオルタナど真ん中で聴いていて本当に気持ちいい。
3. だったらいいのにな
個人的に今作のナンバーワン。このアルバムは全曲良かったけど、他が霞むくらい好きな曲。これが聴けただけでアルバムを購入して良かったと思えた。
しょっぱなで地を這うフレーズが40秒くらい続き重鈍な曲かと思いきや、スピーディーでワウをきかせた印象的な変態リフに様変わりする。この変化には度肝を抜かれるはず。その後は怒涛のオルタナ展開。もうとにかくカッコいい。
「だったらいいのにな」と繰り返される歌詞はインパクト抜群で曲の変態度をさらに高めている。こういう曲が聴けるからロックはやめられない。
4. YAH YAH YAH
50秒しかないけれど、ロックの持つドキドキ感、焦燥感、その他諸々全部ツッコみました的なコブシを突き上げたくなるアツさに満ち満ちた曲。ロック最高。
5. No New World
浮遊感あふれるアレンジが印象的。全編に渡るコーラスも秀逸。涼し気でオシャレなタイトルトラック。
ささやくようなボーカリゼイションが曲のイメージを優しいものにしているが、少しエグイ歌詞が登場するので(といってもそこまで汚い言葉ではないが)ドキッとさせられた。
6. HuHuHu
ギターの小倉直也がメインボーカルを取った新機軸の一曲。
間奏で轟音ギターが登場する以外は比較的ストレートなアレンジになってるので、わかりやすいメロディも相まって非常にポップな仕上がりとなっている。
7. Sugar
オルタナティブロックの教科書のような曲だけど、ヒットチャートも狙えるようなポップスの名曲にも聴こえる。透明感のあるボーカルが切なげなメロディをなぞりエモーショナルで涙腺崩壊。なんだこれは!ってくらい歌詞も切なくてセンチメンタルな感情が沸き上がってくる。個人的に超甘酸っぱい曲。
8. スローモーションリプレイ
先行シングルとして2017年にリリースされた。
シングル曲ということで今作屈指のハイクオリティなポップソング。なんだけどバンドアンサンブルがただのポップスに終わらせていない。ロックバンドとしての強烈なアイデンティティを見せつけられた。
約40秒に渡るアウトロのギターがカッコいいです。
MASS OF THE FERMENTING DREGSの「No New World」レビュー まとめ
簡単ではありましたが、MASS OF THE FERMENTING DREGS「No New World」全曲レビューさせていただいました。
マスドレの過去作品は"男前でロック"な印象がありましたが、「No New World」はそれらに比べポップさに磨きがかかり格段に聴きやすくなっていると思います。
たしかにサウンドは相変わらずバリバリのオルタナだけど、宮本菜津子のボーカルが進化しまくっていて歌モノとして聴いても全然ありです。
バンドサウンドに興味がないスイーツ女子のような層にも十分訴求できるのではないかと思いました。逆にバンドサウンドも歌も楽しみたいロックリスナーなら問答無用で必聴の名盤です。
ひとりでも多くのリスナーにMASS OF THE FERMENTING DREGSの素晴らしさが伝われば幸いです。