Dragon Ashのkj(降谷建志)はヒップホップをやめていない【ジブラとの確執】
先日Yahoo知恵袋の音楽カテゴリでこんな内容の質問を発見した
Dragon Ash のkj(降谷建志)は
Zeebraにディスられてヒップホップをやめたのですか?
Dragon Ash(ドラゴンアッシュ)の人気は、2020年現在も根強いファンに支えられ続いているのだが、90年代後半から2000年代初頭の彼らは、今を遥かに凌ぐ凄まじい人気があった。
飛ぶ鳥を落として落ちた鳥をさらにボコボコにするくらいの勢いだ。
まさに社会現象と呼ぶにふさわしい。
「人気」の次元が違っていた。
そんな人気絶頂のDragon Ashにある日突然事件が起きる。
降谷建志(Kj)を突如襲ったある事件
2000年にリリースされたシングル「Summer Tribe」。
この曲をきっかけに事態は動き始める。
「Summer Tribe」での降谷建志は、当時人気のあったラッパー「Zeebra」の完コピともいえる歌唱法やステージングの模倣をやってのけた。
今はどうか知らないが、当時のkjはZeebraを心から尊敬しており、好き過ぎるゆえの愛ある行動だったようだ。
でも真似された当のZeebraは(当然だと思うけど)面白くなかったため激しく憤る。
そこでZeebraがとった方法は、当時在籍していた「キングギドラ」というヒップホップユニットの楽曲「公開処刑」の中で名指しでディスること。
突然、騒動の発端となってしまったkjにしてみれば寝耳に水だろう。
Kjはジブラに対し愛情表現のつもりでリスペクトを込めて真似をしていたわけだから、一切悪気はなかっただろうし、「公開処刑」を聴いたときは凄まじいショックを受けただろうと容易に想像できる。
大方の予想通り心に大きな傷を負ったkjはしばらくの活動休止後、その音楽性を変え、ヒップホップ業界からも退場したというのが「Summer Tribe」を発端とした騒動の結末。
これらがこの騒動に関する世間一般のイメージだ。
実際Yahoo知恵袋にもそういった見解の回答が数多く見つかった。
だがこの騒動を語るとき、多くの人が誤った認識をしている箇所がある。
そもそもDragon Ashはヒップホップではない
今回の記事で私が言いたいのはこれに尽きる。
Dragon Ashはヒップホップという音楽を一度もやってはいない。
そもそもの話をするなら、
ヒップホップというのは音楽ジャンルではなくカルチャーの名称である。
ヒップホップを形成する三大ジャンルは
●ラップ
●グラフィティ
このようにヒップホップにはラップの要素も含まれるが、それでヒップホップに含まれてしまったらレゲエミュージシャンもヒップホッパーになってしまう。
それから「ラップをやめた」と散々言われているが、
あの騒動以後も楽曲によってはラップを披露している。
2014年リリースのアルバム「THE FACES」収録
2017年リリースのアルバム「MAJESTIC」収録
ご覧のように相変わらずキレのあるラップをかましている。
ラップ云々を別としても
「Zeebraにディスられてヒップホップをやめたのですか?」
の回答は
「ヒップホップをやめたのではなく、ヒップホップはそもそも始めていない」
が正解である。
Dragon Ash はミクスチャーバンドである
「Dragon Ash=ヒップホップ」という認識は未だにぬぐい去れていない。
私は大好きなセンスだが「I LOVE HIPHOP」なんて恥ずかしいタイトルのシングルもリリースしているので誤解されても仕方がないとは思う。
この曲とは別にDragon Ashは純粋なヒップホップナンバーも発表しているので誤解が加速していったんだろうが、kjは一度だって「Dragon Ashはヒップホップをやっている」と発言したことはない。
そもそもインディーズの頃のDragon Ashは「MAD CAPSULE MARKETS」譲りのハードコア色の強いバンドだったし、NIRVANAを意識したと思われるグランジナンバーも渋くてカッコよかった。その時代にも名曲は数多く生まれている。
本題から逸れるけど3ピース時代のコレなど今聴いても最高にかっこいい
「天使ノロック」が収録されたアルバム。捨て曲なしでこれまた最高。
このような「MAD CAPSULE MARKETS」に影響を受けた純粋なハードコアナンバーの一方で、当時のマッドがプレイし始めていた、「ハードコアサウンドにラップを融合させる」という手法をkj自身も取り入れていったのだろう。
驚くほど売れなかったデビュー当時の彼らは試行錯誤を繰り返し、先ほども書いたようなグランジサウンドに挑戦した時期もあった。
元々いろいろなジャンルをプレイしていたので、ライブハウスではブッキングに苦労したと当時のインタビューで嘆いていたし。
そしてなんとか念願のブレイクを果たした頃にはDragon Ash流のミクスチャーロックが産声を上げていた。
つまりDragon Ashというバンドは誰が何と言おうとロックバンドであり「自分たちだけの音楽」を追求するためにラップを取り入れたとしてもそれをヒップホップとは呼ばない。
Kjにとってラップとは、あくまで「表現方法のひとつ」であり、Dragon Ashを形作るひとつのピースでしかない。
したがって、どの作品であっても
ヒップホップがDragon Ashのすべてだったことなど一度もない。
実際、当時はDragon Ashがきっかけで
ヒップホップを聴くようになったリスナーもかなりいるかと思う。
現在の日本でもヒップホップがブームだが、その20年も前にヒップホップのムーブメントを起こしたのがDragon Ashだ。ヒップホップカルチャーとも積極的に交流していた。
このことからも「Dragon Ash=ヒップホップ」というイメージで捉えられがちだが、Kjのルーツにあるのは純粋にロックであり、彼らの時代をどこで切り取ってもそこには純粋なロックしかないということを声を大にして言いたい。
それではまた。
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