ギターのプロになるには一日何時間練習が必要なのか?
毎日何時間ギターを練習すればプロのギタリストになれるのか?
ギタリストの端くれである筆者が経験を基に語っていきたいと思う。
プロのギタリストの定義
まずこの部分をはっきりさせておく必要がある。
後の項目にも関係してくるが、ギタースキルがいくら高くてもプロとは呼べない。どれだけ難しいフレーズを弾けても、繰り出されるプレイに金銭的な価値がなければ、プロのギタリストではなくギターがプロ並みに上手いアマチュアでしかないのだ。
では、どれくらいギターで稼ぐことが出来れば「プロ」と呼べるのか?
その基準は人によって変わってくるだろうが、個人的には、ミュージシャン(音楽的な仕事)の収入だけで生計を立てている人を「プロ」と呼ぶべきだと思っている。
私の周りにいた「プロギタリスト」もほぼそういう考えの人ばかりだった。
生計を立てるという表現も曖昧ではある。状況によっては月10万円でも不自由ないと感じる場合もあるだろうし、最低50万円は絶対必要という人もいるだろう。こんなものを定義することは不可能なので、人間として最低限の生活が送れる範囲の収入ということでご理解いただきたい。
プロのギタリストになるための練習量
非常に逃げ腰な回答になってしまうが、プロになるための練習量は個々の状況により大きく異なる。
たとえば、オールジャンルを弾きこなすスタジオミュージシャンを目指す場合、その練習量は常人の想像をはるかに超える。一日の間、それこそ食事と睡眠以外はギターの練習に充てていても足りないはず。
逆に練習時間が比較的少なくて済む場合もある。
高度なテクニックを必要としないジャンルのギタリストを目指す場合だ。
尤も、「特定ジャンル専門」のギタリストを目指すというのはビジネス上現実的ではないため、該当ジャンルのバンドに在籍する場合と仮定する。
パッと思いつくジャンルではパンクだろうか。もちろんパンクのサブジャンルの中には非常に難解なフレーズを持つ物もあるが、主要な音楽ジャンルの中では比較的易しく、パワーコードのみで成立する楽曲もある。
逆にメタルやジャズといったジャンルは、高度なスキルを要求されることが多い。こういった状況が発生している時点でプロになるための練習量を同列に語ることは出来ない。
ただし最低限のスキルは、どのジャンルにも必要になってくるため、練習量は多いに越したことはない。
ちなみに筆者の場合は、バンドメンバーに「下手」だと思われたくない一心で練習していた。いくつもバンドを渡り歩いたが、大抵どのバンドも自分より上手いプレイヤーばかりだったので、それが本当に恥ずかしかったし情けない気持ちもあった。ギターに触れる時間があれば積極的に練習していたし、多いときは一日10時間くらい同じフレーズを弾いていた事もある。
結局「どれだけ練習すればいいのか」というか、自分が思い描くギタリスト像に手が届くまで練習し続けるしかないと思う。生きているうちに到達できないかもしれないが、それならせめて、息絶えるまで弾ける間は弾き続ければいい。
「一日何時間練習すればプロになれるのか」という考え方
そもそも、一日10時間をギターの練習に充てていたとして、人によって身に付くスピードや得られるスキルの量も変わってくる。効率的に練習できる人なら同じ一時間でも結果は大きく変わってくるはずだ。
だから一日○時間練習しましょうという指針はまったくの無意味。
仮に10年間毎日24時間ギターの練習をしていても、プロになれない人間だっているだろう。逆に1日一時間の練習で高校生がプロになってもおかしくはない。「プロは1日○時間練習する」という考え方は所詮結果論に過ぎない。
これはYahoo知恵袋のとある質問である。
プロのみに回答を依頼しているが、仮に「1日8時間練習すればプロになれるよ」と著名なプロギタリストにアドバイスをもらったとしよう。
そして、言われた通り、毎日練習をした結果プロになれなかったら質問者はどんな気持ちになるか?
きっと「一日8時間練習したのに全然プロになれねーじゃねーか!」とアドバイスした人の所為にするはず。
アドバイスした人間は、一日8時間の練習でプロになったかもしれないが、それが他の人に当てはまるとは言えない。この質問がいかに意味の無いものかがわかるだろう。
これは勉強と同じである。
東大に合格するためには一日何時間勉強すればいいですか?
こんな問いに明確な答えを出せる人間などいないだろう。
そもそも本気でプロを目指している人間は、こんな質問をしている時間を使って1秒でも長くギターを触っている。
「プロの定義」でも触れたが、プレイが上手いからと言って必ずしもプロになれるわけではない。それは、多彩なスキルが要求されるスタジオミュージシャンも然り。ぶっちゃ下手糞なスタジオミュージシャンだって沢山いる。
たとえば、超絶スキルを誇るギタリストがオリジナル作品を自費でリリースしたとしよう。結果、数枚しか売れず借金だけ残ってしまい向こう10年間アルバイトをしなければ生活ができなくなってしまった。
はたしてこれが「プロ」と呼べるのかという話だ。
現在YouTube等では、弾いてみた動画が盛んにアップされている。そこには上手いギタリストが数え切れないほどいるものの、プレイが上手いだけでまったく心に響かない場合もある。
要するにそういう事だ。下手糞なスタジオミュージシャンが重宝されるのはスキル以上に光るモノがあるからに他ならない。それは自分のプレイを魅力的に見せる秘訣を備えてたり、単純に商売の才能があったり。
ただ、YouTube動画の場合は、広告で生計を立てている場合もあるため、そういった意味でプロと呼べるのかもしれない。だがプレイ以外の、たとえば女性ギタリストなら、容姿が多少優れているだとか、露出の多い衣装で男性視聴者の興味を惹くといった、ギタースキル以外で動画が評価されている場合もあり、純粋に「ギタリスト」として飯を食っているというか「タレント性」で成功している気もする。
いぜれにせよ、現在は音楽を使ったビジネスは多岐に渡る。プレイスキルだけでプロか否かを判断することは益々難しくなったと言える。ギターが上手いだけではプロとしてやっていけないのは昔も今も変わらないが、個々のセンスがより問われるようになったのは間違いない。
プロになったら練習しなくなるの?
多くのプロ志願者が勘違いしているが、プロになった瞬間ギターの練習をやめてしまうわけではない。
プロになれば毎日仕事としてギターを弾くことになる。それが練習を兼ねる場合もあるが、仕事以外でもスキルを磨くため空いた時間はギターの練習に充てている。
素人目にもコピーが難しい楽曲は、プロのギタリストであっても簡単に弾ける代物じゃない。いとも簡単に弾いているように見えるが、あれは毎日の練習の積み重ねがあるおかげ。それこそ空いている時間はすべてギター練習に打ち込むギタリストもいる。明確なゴールがないからこそ、より高みを目指して弾き続けなければならない。
結局プロになってもギターの練習はどこまでもついて回るもの。素人が「プロになるための練習量云々」と言っているのが、いかに無意味な事かお分かりいただけただろう。そんなことを考えている暇があったら1秒でも長くギターを練習したらいい。
まとめ
ということで、プロのギタリストになるための練習量について語ってきた。
結局「1日○時間練習すればプロになれる」といった明確な基準は存在しない。だからこそ、どれだけ練習すればいいのか不安になるのだけど、まずは考え方を変えてみよう。
ギターが好きだから弾く
この想いが一番大切ではないだろうか。好きこそ物のなんとやらだ。
ギターが好きなら、あっという間に練習の時間は過ぎていく。そしてどんどん吸収していける。「○時間練習しなくちゃ」なんて考えなくても良いくらいまずはギターに愛情を持ってください。
それではまた。
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